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「心の持ちかたが、不安を克服するのです」ダライ・ラマ法王14世の“心をつなぐ言葉”

2020.06.16

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不安な時代を乗り切るメッセージ「心をつなぐ言葉」 第1回(全7回) 当たり前だと思っていた日常や、世界の情勢はどうなっていくのか―。家庭画報ではそんな時代を生き抜くため、“心をつなぐ”をテーマに、そのヒントを探しました。見えてきた一つのキーワード、それは「思いやり」です。識者のかた、それぞれが考える、私たち一人一人に求められる「思いやり」を紐解いていきます。

「今こそ、私たち全員が
思いやりと助け合いを実行するとき」
ダライ·ラマ法王14世


ダライ·ラマ法王14世

撮影/篠山紀信


ダライ·ラマ法王14世
1935年7月6日、チベット北東部のタクツェルという小さな村に生まれる。2歳の時に先代のダライ・ラマ法王13世の転生者と認定された。50年、チベットの政治、宗教の指導者となる。59年に亡命し、インドのダラムサラにチベット亡命政権を樹立。89年ノーベル平和賞受賞。ダライ・ラマとはモンゴルの称号で「大海」を意味し、仏陀の持つ慈悲の心の象徴である観音菩薩の化身とされ、世界中から慕われている。

心の持ちかたが、不安を克服するのです


時々、「神通力を使って世界の問題を解決してください」と、私に頼んでくる友人がいます。そのようなときはいつも、「ダライ・ラマには神通力などありませんよ」と伝えています。

もし、そのような力が私にあったなら、私は脚の痛みや喉の渇きなどを感じることはないでしょう。私たちはみな同じ人間であり、同じように恐れ、同じように望み、同じように不安を抱いています。

仏教徒の見地から述べるならば、生きとし生けるものはみな、苦痛、病気、老化、死の苦しみが実際に存在することを知っています。しかし人間としての見地からすれば、私たちは心の持ちかたによって怒りやパニック、欲望を克服することができます。

近年、私は「感情面における武装解除」の必要性を強調してきました。感情面における武装解除とは、恐れや怒りから離れて、現実的かつ明確に物事を見る姿勢を意味します。

私たちは、改善できる問題ならば改善策を見つけなければなりません。しかし、改善の余地がなければ、思い煩うことに時間を費やす必要はありません。

一人一人の思いやりのある行動が
多くの人を救います


私たち仏教徒は、すべての世界は相互依存によって成り立っていると考えています。そしてこれが、私がいつも「普遍的責任」について語る理由です。

今日私たちが直面している現実に照らして見れば、もはや国境というものは重要ではないと言えるでしょう。むしろ大切なことは、私たちがグローバルなレベルで人類そのものについて考えることです。

つまり普遍的責任とは、「単に自分の家族、共同体、国家、大陸のことだけを気にかけるのではなく、人類すべてのことをいつも思い、関心を払うこと」を指しています。

この恐ろしい新型コロナウイルスは、1人の身に起きたことが、瞬く間に他のすべての人に影響を及ぼすことを明らかにしました。しかし同時に、医療の現場で働くことであれ、ただ人混みを避けることであれ、一人一人の思いやりのある行動によって多くの人が救われていることもまた気づかせてくれました。

中国の武漢市で新型コロナウイルスが発生したニュースに接して以来、私は、中国をはじめとする各地の兄弟姉妹の皆さんのために祈りを捧げてきました。

今はまだこのウイルスの免疫を持つ人があまりいないことをだれもが知っています。だれもが、愛する人たちやこの先のこと、世界経済やそれぞれの家計のことを心配しています。

しかし、祈っているだけでは十分ではありません。この危機は、私たちのだれもが、自分がいるその場所で責任ある行動を取る必要があることを教えてくれています。

私たちは、医師や看護師のみなさんが示している勇気を、経験に裏付けされた科学と結びつけることによってこの状況を立て直し、私たちの未来をさらなる脅威から守らなければなりません。

ダライ·ラマ法王14世

苦しみのない人などだれ1人いません。
これを肝に銘じて、救いの手を
差し延べなければなりません


このような大きな恐怖の中にあるときには、地球全体としての長期的課題と可能性について考えることが大切です。

宇宙から地球を撮影した写真を見るならば、この青い地球には境界線などないことがわかります。私たちのだれもが地球を大切にして、気候変動と環境破壊の抑制に取り組んでいかなければなりません。

私は、この新型コロナウイルスは、「私たちが直面している未曽有の問題を乗り越えるには世界規模の協調した歩み寄りが唯一の解決策である」ということの警告でもあると考えています。

苦しみのない人などだれ1人いません。これを肝に銘じて、身を護るための家や資金、家族がいない人たちに救いの手を差し延べなければなりません。

たとえ離れていても、私たちを隔てるものはないということを、この危機は教えてくれています。つまり私たち全員に、思いやりと助け合いを実行する責任があるのです。

ダライ·ラマ法王 14 世

万物は無常。
希望や信頼を失わないでください


仏教徒として、私は、万物は無常であると考えています。

私がかつて目にした戦争や極度の脅威が今は過去のことであるように、新型コロナウイルスもやがて過去のこととなり、これまで何度も繰り返されてきたように、地球という共同体を立て直すときが来るはずです。私は心から、だれもが安全で、落ち着ける場所があることを願っています。

このような不安な時世においては、きわめて多くの人々による建設的な努力に対して、希望や信頼を失わないことが何よりも大切なのです。

※ダライ·ラマ法王14世公式ウェブサイト参照
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