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2023/05/03
写真/イメージマート
選・文=小林浩幸(雑草生態学者)
私の祖母はナズナをぺんぺん草と呼んでいた。実がぺんぺんと弾く三味線のバチに似ているからだそうだ。
昔からある道ばたの草と思っている方も多いだろうが、麦畑でも代表的な雑草で、麦のたねに紛れ込んで大陸から渡ってきた「史前帰化」と考えられている。
世界中の植物の標本を持つイギリスのキュー王立植物園が提供するナズナの分布図でも、日本は確かに「帰化」した国の色分けだ。麦畑で多く見られるのは、麦畑でよく使われてきた除草剤がナズナの属するアブラナ科にあまり効かないことにもよる。
昔も今も、こうした人の移動や生産活動などの一切の営みが、身近な場所の植生を作り出している。今年も麦秋の季節が近づいてきた。
写真/Anazawa/アフロ
『家庭画報』2023年5月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。
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