学ぶ
2023/03/06
写真/佐藤 尚/aflo
選・文=小林浩幸(雑草生態学者)
仏様の台座のように茎を取り囲む葉を見てホトケノザ、とはよく名付けたものだ。唇のような特徴的な花から、これがシソのなかまだとわかる。大きめで、ふしぎな形をした花は、だいたいが虫をおびき寄せ花粉を運んでもらうためのもの。
でも、実際には最後まで閉じたままの「閉鎖花」もつけて、自力でも結実する。できた種子にはアリを引き寄せるにおいを出す部分があって、巣の近くまで運ばせる。コンクリートや石垣の割れ目にぽつんと咲くホトケノザは、アリに運ばれたものだろう。
他の生き物に依存しながら自活もできる。古風な名前に似合わず、人の助けにきずなを感じながらひとりの時間も大切にしたい、そんな現代人に重なるような生きざまだ。
『家庭画報』2023年3月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。
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