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【季節のオノマトペ】言葉遣いの名人・紫式部が描き分けた、美しい髪を形容することば

3月・美しい髪

つげ櫛

つげ櫛「極品 さつまつげ 解き櫛」/かづら清老舗

つやつや

選・文=山口仲美(日本語学者)

3月3日は、お雛祭り。女雛を見ると、長い髪を美の基準にしていた平安時代の女性たちを思い出します。

彼女たちの長く美しい髪は、『源氏物語』をはじめとする平安女流文学作品では、「つやつや」「はらはら」「ゆらゆら」で形容されています。その中で、『源氏物語』だけが、この3語を登場人物の描き分けに使っているんです!

一番美しい髪は、天性の光沢美を表す「つやつや」ですね。それは、主人公格の女性たちの髪の形容。「はらはら」は、顔や着物にこぼれかかる美しさですが、脇役的な女性たちに使っています。「ゆらゆら」は、揺れ動く動的な美しさ。それは、子供たちの髪の形容。

平安時代の他の物語で、こんな描き分けの芸当をしている作品は皆無。紫式部は、まさに、言葉遣いの名人です。

撮影/本誌・武蔵俊介

『家庭画報』2023年3月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。

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