学ぶ

柳田邦男さんが大切にする「かけがえのないひととき」平和のありがたさの象徴とは

新しい世界の生き方 8月・道端の草花を愛でる

かけがえのないひととき ユウゲショウとの 忍び逢い

文=柳田邦男(ノンフィクション作家・評論家)

木々の新緑がみるみる濃くなるなかで、午後の散策の途中でふと気づくと、道端の雑草の中に、ユウゲショウのちっちゃな清楚なピンクの花がいくつも、つぶらな瞳のように、「わたしはここよ」と、こちらを見つめている。

「あ、また逢えたね」と、私は胸をときめかせる。私が大切にしている心の解放のひとときだ。ヒルザキツキミソウのあの淡い紫がかったピンクの花とも、もうすぐ再会できるなと、1年前に毎日逢う瀬を楽しんだ一角に目をやる。思春期の少年時代に戻った気分だ。

ふと思う。街も森も広大な畑も、無残に破壊されていくウクライナの凄惨な光景を。道端の雑草の可憐な花を愛おしむことができるとは、平和のありがたさの象徴ではないか。今こそ歌おう。<花はどこへいった>── と。

『家庭画報』2022年8月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。

Ranking今週の人気記事 ベスト5

家庭画報 最新号

9月号 8月1日発売

次の九州は“美味しい”を訪ねて

一部地域は輸送の関係で発売が遅れる可能性があります。

© SEKAI BUNKA PUBLISHING INC. All rights reserved.

Loading