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使い勝手よりも物語を表現したかった? 縄文人の世界観が垣間見える「火焔土器」

私たちに生きる縄文の遺伝子 5月・物語の表現

縄文土器

画像提供/長岡市立科学博物館 国重要文化財・日本遺産 馬高遺跡出土火焔土器(新潟県長岡市関原町)

縄文土器は口縁に大仰な突起を持ち、器面全体を立体的な文様が覆う。特に縄文時代中期の土器はそうした特色が顕著で、約5000年前に作られた「火焔土器」はそれを象徴する存在である。煮炊きに用いる器として作られながら、その用にかかわらない鶏頭冠状の突起や渦巻状の隆起線文様からは、縄文人の世界観が垣間見える。

火焔土器

文=小林達雄(考古学者)

隣の朝鮮半島はもとより、古今東西の土器はおしなべて口縁が真っ平らだ。しかし縄文土器は独り、前触れもなく異変を生じた。

うっかりすると見落としかねないほどのこぢんまりした突起がつけられたのだ。形全体を左右するわけではなく、かえってものの出し入れにやっかい。

しかし突起は次第に増殖を始める。その典型が火焔土器の4つの鶏頭冠である。その大きさたるや、全体の重心を押し上げて不安定にするばかり。

縄文人の真意は一体全体どこにあるのか。使い勝手よりも手持ちの物語を目に見える形にデザインしたかったのかもしれない。縄文土器に宿る魂の化身だ。

『家庭画報』2022年5月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。

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