美容・健康

自覚しないうちに、意外と早く始まる「嚥下機能の低下」。知っておきたいその仕組み

病気やケガで飲み込みがうまくできなくなることも

飲み込みがうまくいかなくなる理由は、加齢だけではありません。

嚥下の際には「飲み込め」という脳神経からの指令も必要になるため、脳卒中(脳梗塞や脳出血)、アルツハイマー型認知症やパーキンソン病のような神経疾患、事故による脳損傷などで脳神経が傷害されたときにも嚥下機能が落ちやすくなります。

舌や喉、食道のがんやその治療も影響します。また、カルシウム拮抗薬、三環系抗うつ薬、抗コリン薬といった、比較的よく処方される薬が筋肉をゆるめて飲み込む力を弱めることもあります。唾液の分泌を抑制する利尿薬や抗ヒスタミン薬も要注意です。

「飲み込みがうまくいかないと感じるときは、加齢以外にも何か原因が隠れている可能性があります。ぜひ耳鼻咽喉科などで診察を受けてほしいですね」と浦長瀬先生は強調します。

飲み込みがうまくいかなくなる原因

●加齢
舌や喉の筋肉や口腔や喉頭などの感覚が次第に衰え、飲み込みのタイミングが遅れたり、飲み込む力自体が落ちたりする。

●薬の影響
カルシウム拮抗薬、三環系抗うつ薬、抗コリン薬といった筋肉をゆるめる作用のある薬は舌や喉の筋肉にも作用して、飲み込む力を下げる。利尿薬や抗ヒスタミン薬は唾液の分泌を抑えるため、やはり嚥下に影響することがある。

●脳卒中
脳卒中(脳梗塞や脳出血)は嚥下障害の大きな原因となっている。舌や喉の筋肉が衰えておらず、脳神経の障害が回復していけば、飲み込みの機能も回復していくことが多い。事故による脳損傷でも嚥下障害が起こることがある。

●神経や筋肉の病気
パーキンソン病、アルツハイマー型認知症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの神経や筋肉の病気では飲み込む力が衰え、嚥下障害が進行していく。

●がん
舌がん・咽頭がん・喉頭がんのような頭頸部がん、食道がんでは、がんそのものやその治療の影響で飲み込みにくくなる。

●口や喉の炎症
急性の口内炎や咽頭炎、喉頭炎などでは、飲食物が染みて飲み込めなくなる。

介護の現場で行われている嚥下リハビリテーション

高齢者介護の現場では、食事をしているときの様子を観察して、咀嚼や嚥下がうまくできているかを評価します。また、歯や舌などの口腔ケアの状態もチェックします。

そして、嚥下障害がみられる、あるいは嚥下障害になる危険があると判断される場合には、飲食物を使用しない方法で訓練を行います(間接嚥下訓練)。

間接嚥下訓練には、腹部を圧迫しないで姿勢を正しく保つことのほか、主に食事前に唇・舌・頰・首・肩などを動かす嚥下体操、コップに入れた水をストローで吹くブローイング訓練、深呼吸などの呼吸の訓練などがあります。

また、誤嚥のリスクが高い人には、とろみをつけたり、細かく刻んだり、ペースト状にしたりした食事や水分を用意して、実際に飲食する訓練も行われます(直接嚥下訓練)。

「介護の現場では、負荷の軽い基礎訓練を行ったり、食形態の調整や食事の介助をしたりすることを中心にせざるを得ません」(浦長瀬先生)。

次回は嚥下訓練をご紹介します(2/5公開予定)。

〔解説してくださったかた〕浦長瀬昌宏(うらながせ・あつひろ)先生
浦長瀬昌宏先生

神鋼記念病院 耳鼻咽喉科科長
嚥下トレーニング協会代表理事
2003年神戸大学医学部卒業、同大学大学院医学研究科耳鼻咽喉科頭頸部外科学分野修了。耳鼻咽喉科専門医。09年から神鋼記念病院に勤務し、同院内の器官組織病態研究所(ENT medical lab)主任研究員として研究にも従事。15年に日本で初めての嚥下トレーニング外来を開設、17年には嚥下トレーニング協会を設立、代表となる。著書多数。

withコロナ時代の健康術

1「血管」
1−1 血管の老化はさまざまな病気を招く
1−2 血管年齢を調べる
1−3 血管を若く保つ

2「飲み込む力」
2−1 飲み込む機能が衰えると命にかかわることも
2−2 嚥下の仕組み
2−3 飲み込み方トレーニング(2/5公開予定)

取材・文/小島あゆみ 撮影/塩川真悟 イラスト/にれいさちこ

『家庭画報』2021年2月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。

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