アート・カルチャー・ホビー

パリで「才能あるクリエイター賞」を50歳で受賞。原田江津子さんのクリエーションの魅力

とても細かな手作業から生まれるジュエリーの緻密さはため息もの。

乳がんを乗り越えて、改めて感じるクリエーションの喜び

シミオテラピー(抗がん剤治療)、ラジオテラピー(放射線治療)、そしてキュリーテラピー(小線源治療)まで、原田さんの治療は進みます。

「当時、治療を続けながら、フラフラになりつつも、何もなかったかのように仕事をし、普段どおりの生活をしていました。かえってそれが良かったのか、体はキツかったですが、気持ち的には随分と助けられた気がします。

今は健康であることのありがたみを強く感じますし、ジムに通い自分の体と向き合うようになりました。おかげで自分の体と心が通じるようになったと感じます。健康であってこそポジティブに活動し、創作し続けることができるのですから」

東日本大震災後、悲しみにくれる原田さんの心に降りたビジョンを元に誕生した「エデン」。

社会情勢や心を映した作品が心を打つ

原田さんの作品に心惹かれるのは、ただデザイン性だけではありません。手編みで紡がれる繊細なニットや手染めの生地の美しさに、原田さんの“気持ち”が反映されていて、そこに見る人、身につける人の心が引き寄せられるのだと感じました。

「2011年の震災の後に生まれた“心機一転”をコンセプトにした『エデン』や、使い捨てペットボトルを再利用してデザインした『WATER & ME』など、そのときの社会の状況やそれを受けた私の感情を通してイメージが生まれます。だからその時々に作れるものは違うし、それぞれに自分の子供のように愛おしいのです」

原田さんの意思と技術を受け継ぐ娘の夢子さん(手前)。

原田さんの意思を信頼できるスタッフとともに形に

「TAMBOUR PARIS」には、彼女の生み出した技術で彼女のデザインを形にするスタッフたちが常に集まっています。原田さん同様、幼い頃から編み針を握ってきたという、高校3年生の娘の夢子さんも、彼女の意思を継ぐ一人。

また経済破綻し国が大混乱に陥っているベネズエラから難民としてフランスに移住した職人、アンナ=カリナさんは、研修期間を終え、正式にスタッフとして加わることに決まりました。

「ここで働いてくれる人たちには、いつもその人の技量や個性に合わせた作品をプレゼントするんです。それが私の愛情表現」と原田さんは微笑みます。

ベネズエラからの難民としてフランスの滞在許可を得た職人のアンナ=カリナさん。

クリエイターである前にヒューマニストでありたい

これまでも東日本大震災、内戦で混乱したアフリカの国々など、社会に目を向けた作品づくりをしてきた原田さん。今は研修生として受け入れているアンナ=カリナさんの祖国、ベネズエラの情勢に心を痛めているといいます。

「同じ地球に住みながら、大変な状況に陥っている人々、国々がある。社会、そして人々がこうあってほしいという思いを込めて作品を作っています。クリエイターではありますが、それ以前にヒューマニストでありたいと思います」

そんな原田さんの使命にも似たビジョンから生み出される「TAMBOUR PARIS」の作品。手仕事による繊細なデザインの中に込められた強いメッセージが、身につける人に凛としたオーラをもたらします。

次回は、パリで称賛された原田さんのクリエーションの美に迫ります。

原田江津子/Etsuko Harada

ニット&ジュエリークリエイター。武蔵野美術短期大学卒業後、エスモード・パリ校を経て、デザイナー、 イラストレーター、ファッションアドバイザーとして活躍。

1999年、ふたつとない作品を“限定版”で製作するニットブランド「タンブール パリ」を日本で設立。2012年パリ11区マンドール地区のトルソー通りにブティックをオープン。2016年1月、ビジョルカ国際見本市「ビジョルカ・パリ」のファンタジー・ジュエリー部門で「才能あるクリエーター」賞受賞。

2019年9月~2020年2月初旬に「Musée de la dentelle de Chantilly」で行われた展示会に出展。また2020年4月3日~6日に行われる、Confédération Française de Métiers d’art de l’excellence et du luxeが主催する「師匠の手から(“De Main de Maitre”)」に入選、出展予定。パリのブティックのほか、日本のH.P. FRANCEの各店で展開(展開店舗はお問い合わせを)。

Information

TAMBOUR PARIS
12, rue Trousseau, 75011 PARIS, FRANCE
電話 +33(0)9 80 82 94 77
営業時間 11時〜19時
日曜定休
https://www.tambourparis.com

記憶H.P. FRANCE
東京都千代田区丸の内1-5-1 新丸の内ビルディング 1階
電話 03-3211-3370
営業時間 11時〜21時(日曜・祝日〜20時)
無休(年末年始を除く)

原田さんの記事がH.P. FRANCEの公式サイトで紹介されています。


ルロワ 河島 裕子 / Hiroko Kawashima Leroy

ファッションライター。『家庭画報』をはじめ大人の女性に向けた雑誌で、ファッションやジュエリー、時計を中心に幅広く執筆。2018年より、家族とともに、拠点をフランス北部の田舎に移す。2019年夏、ついに憧れのブルゴーニュに家を購入! 夢は夫とともにB&Bを営むこと。パリで道ゆくおしゃれな人に体当たり取材する「パリ、大人のおしゃれの見本帳」、行き当たりばったりのフランス移住エッセイ「意外となんとかなる!? 40代のフランス移住」を同サイトで連載中。

写真/水島 優 編集・取材・文/ルロワ河島裕子
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