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白洲信哉さんが語る 祖母・白洲正子さんの旅スタイル

白洲信哉さん

白洲正子さんとのはじめての旅

「今何が楽しいの?」と会うたびに聞いてくれた祖母・白洲正子さん。そのときどきに興味のあることを話すと、真剣に耳を傾けてくれたという。

野球に興味があると言えばグローブを、写真が好きだと話すと写真機を買ってくれた。小学校で習った聖徳太子のことを「すごい人だね」と言うと「じゃあ現場に行かなきゃ」。それが白洲正子さんとの旅の始まりだった。

2泊3日の奈良の旅は、なぜか太子とは関係ない櫻井の大神神社に始まり、聖徳太子生誕の地は後付けで、でもお墓でしめくくられた。その道程は決して細かく設計されたものではなく、道中の小さなお宮や食べ物屋に気の向くままに 立ち寄り、あらゆる「道草」を楽しんだ。

「あれはどうこう」と細かに解説することもなく、その場その場で信哉さん自身が感じとることを優先してくれたおかげか、今でもその旅のことを詳細に、楽しい記憶として覚えているという。

「一方的に教わるだけだったら、きっと嫌になっていたと思います。何を感じて、自分の肥やしにしていけるか、祖母はその大切さを誰より分かっている人でした」

白洲正子さんの旅スタイル

日頃から予定を立てずに旅に出ていたという正子さん。

「その場その場で見られる景色、音、光といった一期一会を楽しんでいました。祖母の愛した美術品と同じですね。特に山の形には興味がありました。神と崇められる『神体山(しんたいざん)』のあるところには、信仰があり、文化があり、歴史があるからです」

行く先々で気になったことを見つけ、帰宅しては吉田東伍の『大日本地名辞典』と照らし合わせる。たくさんの気になった「点」を発掘し、無数の点を繋げて、一本に編み上げる。そうして生まれたのが名著『かくれ里』だという。

吉田東伍『大日本地名辞典』

白洲正子『かくれ里』

「今やそうした取材をされる方はほとんどいません。先にテーマや答えが有って、その型に当てはめてしまう。しかし僕は今でも祖母の取材姿勢を尊敬しています」

なにかにつけて正答を急ぎ求めがちな現代において、白洲正子さんのような道程を楽しむ心意気に学ぶところは大きい。「正解ではなく、過程を積み重ねていくこと、感得することが何より大切なのです」

2020年 白洲正子 生誕110年によせて

電車に乗る時、正子さんはいつも入場券しか買わなかったという。乗る時点では、降りる駅が決まっていないからだ。やがて信哉さんが車の免許を取ると、二人でのドライブ旅が増えた。

「祖母は、助手席で寝たことが一度もないんです。いつも車窓からの景色をじっと眺めていて、気になるものがあるとすぐに『あれ何?』。当然全てに答えられる訳ではありません。今ならスマホの地図アプリがあるんですけどね」と信哉さんは笑う。

「2020年は東京オリンピックの年。前回の東京五輪で祖母は、周囲の熱狂を尻目に西国三十三ヶ所の観音巡礼を取材しました。僕もそれにならって、また西国巡礼に出てみようと思っているんですよ」

白洲正子『西国巡礼』

白洲信哉『かたじけなさに涙こぼるる』

白洲正子さんと唯一一緒に旅したお孫さん、白洲信哉さんの語る正子さんの旅。
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〔セブンアカデミー〕
白洲正子の日常2~旅編~

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白洲正子の日常2 ~旅編~
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2020年3月14日(土) 13時~14時30分

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セブンアカデミーとは――

『家庭画報』をはじめとする数々の雑誌や書籍を出版する小社が、主催・運営するカルチャー教室です。世界と文化の頭文字をとって、「セブンアカデミー」と名づけました。弊社刊行物の著者や各界で活躍する著名なかたがたを講師に迎え、出版社ならではの上質なカリキュラムの講座をご提供。わかりやすさ・楽しさも踏まえて、お子さまからシニア世代まで幅広い年齢のかたがたを対象とするテーマと内容を展開してまいります。余暇の楽しみや、ステップアップのきっかけに……。洗練された空間で思い思いの“学びの時間”をお過ごしください。

撮影・文:沼知りえこ

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