美容・健康
2019/10/18
バイオバンクとは、ある集団に属する人々の検体(血液や尿、患者の組織など)や健康状態、これまで受けた治療のような診療経験、生活習慣などの情報を一括して集めたものを指します。
1人の人の体のデータと遺伝子、食事や運動などの生活情報を紐づけし、それを統合して大規模に解析することで、病気の発症や進行の原因を突き止め、その結果を治療や予防、健康増進に用いることを狙って構築されるシステムで、世界各国で国や大学、医療機関などが運営しています。
各バイオバンクは、研究者の求めに対し、研究内容を精査して、外部の専門家なども加わった委員会での審査を経たうえで、研究者が必要とする検体や情報を提供します。
日本では、2013年のヒトゲノム指針の改正により、バイオバンクに検体や情報を提供する人は、1つ1つの研究への毎回の承諾ではなく、包括的に自分の検体や情報を使ってよいという同意を行うことが一般的になりました。
もしも研究に協力する気持ちが途中でなくなった場合には、一定の手続きを経ると、以降の健康調査を受けるのをやめたり、今後の研究にこれまで採取した検体や情報を使われないようにしたりすることができます。
検体や情報の収集、分析、研究には時間がかかるため、バイオバンクに協力した人自身はその恩恵を直接受けられない場合もよくありますが、現在では、バイオバンクは医学の発展には欠かせないシステムになっています。
1998年
アイスランドで当時の全国民27万人を対象に家系情報を取得するコホート研究deCODEが始まる。
2000年代
遺伝子解析技術の進展で、世界で患者の検体を保存するバイオバンクが構築され、患者コホート研究が本格化する)
2005年
台湾で住民20万人を対象とする台湾バイオバンクが設立される。
2006年
英国で住民50万人を対象とするUKバイオバンクが設立される。
2007年
オランダで16万人を対象に3世代の家系情報を含む住民コホートLifelines開始。
2013年
東北メディカル・メガバンク計画により、宮城県・岩手県の住民8万人と3世代7万人の家系情報付きコホート研究が始まる。
2015年
米国でPrecision Medicine Initiativeが住民100万人以上を対象とするコホート研究とバイオバンク構築を開始。
・病気の超早期発見から予防まで!? マイクロRNAの拓く未来
・AI(人工知能)による画像診断で、未来の医療はどう進化するのか
・医療の見直しが始まった今、「賢明な選択」のために患者ができること
・【病気やケガ】治療方針を決める際、大切にしたい4つのプロセスとは?
・進化する「がんゲノム医療」の現状と未来について。一人一人のがんには違いがある
・遺伝子を調べてがん治療に生かす、最先端「がんゲノム医療」とは?
・アップルウォッチで心電図、センサー内蔵の飲み薬も登場!最先端医療「IoMT」って?
・治療支援アプリって?乳がん患者の副作用に特化した「フリックカルテ」開発者に聞く
・がんの新しい免疫療法として注目の「免疫チェックポイント阻害薬」
・免疫チェックポイント阻害薬の実用化で進展「複合がん免疫療法」
・医療政策の立案や医学研究の計画に「患者や市民の参画」が進んでいる
・患者・市民が立案段階から参画することで、よりよい医学研究へ
・機器のネットワーク化によって収集された手術データを意思決定や合併症予防に生かす
取材・文/小島あゆみ イラスト/tokco〈LAIMAN〉
『家庭画報』2019年11月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。
© SEKAI BUNKA PUBLISHING INC. All rights reserved.
Loading