美容・健康
2019/06/28
漢方外来では、漢方薬による治療が行われ、西洋医学に加え漢方医学を専門的に研修した医師が診療を受け持っています。
「問診では患者さんの困っている症状だけでなく、生活スタイルや嗜好なども確認し、四診(望診、聞診、問診、切診)と呼ばれる東洋医学の伝統的な診察法を用いて、その人の証(しょう)(体質や全身状態)に適した漢方薬を処方します」と森先生は説明します。
また診断の結果、西洋医学のほうが適していると判断した場合は、漢方薬を出さずに望ましい治療法についてアドバイスをします。
ここで使われる漢方薬は、飲みやすく保存しやすい状態にあらかじめ加工された漢方製剤(エキス剤)ではなく、天然生薬を組み合わせた煎じ薬が中心です。
薬の種類によっては丸薬や散剤が使われることもあります。「薬剤師が一剤ずつ調剤しているため、生薬の種類は同じでも分量を変えたり、ほかの生薬を追加したりすることが可能です。こうした強みを生かし、そのときの患者さんの症状や全身状態に応じて処方内容を細かく調整していきます」と森先生。
つまり、完全オーダーメイドの治療薬が提供されるため、それだけ効果も高いというわけです。
「初診で処方した漢方薬を1、2週間服用した時点で再度受診してもらい、症状の変化を確認します。薬が適していればそのまま1か月ほど服用を続けてもらい、適していない場合は生薬の配合や分量などを見直し、もう1度、薬を調整します。いずれにせよ、的確に診断し最短ルートで治すことを大事にしています」
同時に副作用のチェックも行います。西洋薬と同じように、漢方薬を飲んだときにも動悸や粘膜の腫れといったアレルギー反応が出ることがあるほか、生薬にもよく知られた副作用があるからです。
「黄芩(おうごん)には肝機能障害、甘草(かんぞう)にはむくみや高血圧、山梔子(さんしし)には長く続けて服用した場合に腸管膜静脈硬化症が起こることがあります。これらの生薬を含む漢方薬を服用している人は特に注意深く見守りますが、血液検査や内視鏡検査などの定期的な副作用チェックをおすすめすることもあります」。
一方、漢方薬は原材料(生薬)がよくないと効果が期待できないともいわれます。そのため、同センターでは良質な生薬を使うことにもこだわります。
森先生によると、生薬や漢方薬に対する豊富な知識を持ち、品質管理にも精通した薬剤師が国内外から厳選した生薬を仕入れているそうです。
外からは見えない部分ですが、このようなことも同センターの特筆すべき点の1つです。後編へ続く>>
東京都港区白金5‐9‐1
北里大学東洋医学総合研究所 漢方鍼灸治療センター 漢方外来
〔主なスタッフ〕医師18名、鍼灸師6名、薬剤師11名、看護師5名、事務スタッフ14名
〔主な連携先〕北里大学北里研究所病院、地域の医療機関など
同病院への受診を希望する場合、初診は予約なしでも受けられるが、電話による事前予約が望ましい。受診の詳細については同研究所のホームページ「漢方鍼灸治療センター/診療案内」をご参照ください。
https://www.kitasato-u.ac.jp/toui-ken/center/guide.html
●予約センター
TEL:03(5791)6169
●予約受付時間
月曜~金曜:8時30分~17時
土曜:8時30分~12時30分
〔費用〕自費診療
初診料4320円~、再診料2160円
漢方薬代1日500~1000円程度×日数
鍼灸初診料4320円
鍼灸施術料7000円(鍼灸師)、7500円(医師)
漢方ドック4320円
【参考情報】
●漢方外来を探したいとき
日本東洋医学会では2019年3月末現在、全国で2148名の「漢方専門医」を認定しており、その養成のための研修施設も指定している。この専門資格を持つ医師が勤務する医療機関および研修施設では、漢方外来を設置している可能性が高い。いずれのリストも日本東洋医学会のホームページで公開されている。
日本東洋医学会「漢方専門医の検索」
https://www.jsom.or.jp/jsom_splist/listTop.do
日本東洋医学会「指定研修施設」
http://www.jsom.or.jp/medical/specialist/sisetu.html
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取材・文/渡辺千鶴 撮影/八田政玄
「家庭画報」2019年7月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。
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