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連載・季節の賞翫(しょうがん) 飾り花 端午の節句──花菖蒲と蓬に無病息災を願う

2023.04.27

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季節の賞翫 飾り花 造花工藝作家の岡田 歩さんが綴る、四季折々の行事と草花の物語を月に1回、12か月紹介する連載です。一点一点丁寧に、創意工夫を凝らして作った飾り花を賞翫しましょう。 ※賞翫/良い物を珍重し、もてはやすこと。物の美を愛し味わうこと。

5月 水辺に咲く花菖蒲の姿に魅せられて


文=岡田 歩(造花工藝作家)

花の勢いもゆるやかに和らぎはじめ、萌ゆる若葉のきらめきと共に、軽やかな風が春の名残惜しさを爽やかに忘れさせてくれます。

これから訪れる青葉の美しい季節に想いを馳せ、端午の節句の飾り花をこしらえました。


造花工藝作家岡田歩さんの飾り花花菖蒲の花びらは正絹を二枚に重ねて染めており、ピンセットを用いて細工を施しました。蓬の葉は表と裏で濃淡に染め分けた絹を重ねています。

端午の節句は「菖蒲の節句」とも呼ばれ、無病息災の薬効として行事に使われるのは、サトイモ科またはショウブ科に属する菖蒲の葉です。私は花の作家ですので、アヤメ科の花菖蒲と蓬の葉をこしらえました。

もともとは他の節句同様、中国由来の端午の節句。日本に伝わって男の子の健やかな成長を願う行事となりました。縁起物として柏餅や鯉のぼりなどが生み出され、「日本ならでは」のいまの形になったようです。

私は三姉妹でしたので、子供の頃は鯉のぼりや鎧兜などを家に飾ることはありませんでしたが、いまも昔と変わらず、端午の節句の日には、菖蒲湯にゆっくり浸かり、柏餅を美味しくいただき、季節の節目を迎えます。

この時季になると、巷の花屋さんにはアヤメ科の花が並びます。家に持ち帰った燕子花(かきつばた)や花菖蒲の「葉組み」(葉のねじれなどを整え直して活けるいけばなの技法)をして、初夏の景色を水盤に映すのも楽しみのひとつです。

日本の代表的なアヤメ科の植物は様々ありますが、なかでも燕子花や花菖蒲は日本美術の題材として数多く取り上げられています。私は美術品を所蔵なさっている方々から「コレクションの絵画に描かれている花を、立体の花の作品として新たに表現する」という内容の制作依頼をよくいただきます。そのようなこともあり、私はアヤメ科の花をお題とした作品を制作する機会に恵まれてきました。

美しく、しかも正確に花の姿を作品化するには、観察だけではなくその花がどういう植物なのかという知識も必要です。「あやめ」「燕子花」「花菖蒲」について様々な文献をひもといてみたところ、花びらの模様や葉の作り、また生育する場所の特性なども、それぞれに異なることを識りました。

造花工藝作家岡田歩さんの飾り花「花菖蒲」は、「菖蒲」に葉が似ていることから、名付けられたそうです。蓬の葉も菖蒲も共にそれぞれの薬効があるといわれています。

ご存じの方も多くいらっしゃると思いますが、「あやめ」は網目状の模様が花びらの元のところにあり、葉は細く、草原に生えます。「燕子花」は長剣状の細長い白い筋が花びらの元の中央に入っていて、葉は幅広で平べったく、水湿地で生育します。そして、「花菖蒲」は花びらの元に黄色が入り、葉の中助(ちゅうろく)がハッキリとして、湿地に育つそうです。

私は学びを得るほどに、草花や木々を題材にした先人達の美術作品を拝見するのがより一層楽しくなりました。何故なら、植物を識ることにより「作り手がどの様な意図でこの作品や植物と向き合ったのか」と想像を膨らませることができるようになったからです。対象について学び、造詣を深める作業を重ねることは、たとえ、デフォルメやアレンジを加えるにしても、作品を創り出すにあたり、とても大切なことだと思うのです。

岡田 歩(おかだ・あゆみ)

岡田歩さん 造花工芸作家造花工藝作家
物を作る環境で育ち幼少期より緻密で繊細な手仕事を好む。“テキスタイルの表現”という観点により、独自の色彩感覚と感性を活かし造花作品の制作に取り組む。花びら一枚一枚を作り出すための裁断、染色、成形などの作業工程は、すべて手作業によるもの。
URL:https://www.ayumi-okada.com
撮影/大見謝星斗 スタイリング/阿部美恵 撮影協力/AQ PRIME駒沢
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