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金剛流の若宗家・金剛龍謹さんの日常に密着。稽古が中心の日々、2人の息子への思いも

2022.07.22

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能の世界へ導く「金剛流の魅力」 第1回(全3回) 京都に拠点を置く金剛流の若宗家である金剛龍謹(こんごう・たつのり)さんを家庭画報本誌が初めて取材させていただいたのは2005年のこと。まだ17歳だった少年は、今では2人の息子を育てる父親である。2度目の取材は能の会「龍門之会」を発足した24歳のときで大曲『望月』を披いた節目の年だった。当時も能への熱い想いを語っている。それから10年が経ち、現在は能楽師が基盤を築くうえで大切な時期。その日常に密着させていただき、“能のために生きる姿”をお届けする。
金剛龍謹さん

シテ方金剛流能楽師で流儀の若宗家の金剛龍謹さん。

金剛龍謹(こんごう・たつのり)
1988年京都府出身。同志社大学文学部国文学科卒業。父は金剛流26世宗家の金剛永謹。幼少より父と祖父の2世金剛 巌に師事。5歳のときに仕舞『猩々』で初舞台。京都市立芸術大学非常勤講師。京都市芸術新人賞受賞。

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能楽師が過ごす一日でいちばん時間を割いているのは“稽古”。まずは自分自身が出演する公演のため、2人の息子のため、一般のお弟子さんのため、そして大学の部活動を指導するためには、能について継続的により深く“学ぶ”ことが欠かせない。

さらに能楽師には、稽古を重ね、自らの礎を築いて芸を磨き、後世に伝えるという大切な使命がある。

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長男の謹一朗君(左)と次男の宣之輔君(右)に舞の指導をする龍謹さん。謹一朗君は2022年7月の「第十回記念龍門之会」で初めてシテを勤める予定なので、それに向けた稽古に取り組んでいる。

「もし今日が地球の最後の日だったら何をしますか」。当時24歳だった金剛龍謹さんにこの問いを投げかけると「稽古をします」と即答した。

そのまっすぐなまなざしからは、能に対する真摯な想いが伝わってきた。そして彼の考えは、今なお変わっていない。

謡の様子

能の声楽である“謡(うたい)”の様子。能の詞章に節をつけて謡う。能舞台の床下には大きな甕が設置されているため、声や足拍子などが甕の共鳴効果で空間全体に美しく響き渡る。京都の御所の近くにある金剛能楽堂にて。

「20代になったばかりの頃は能がすごく面白くなってきた時期でした。30代になっても能楽師は、まだまだ“駆け出し”でございますので、芸の向上に専心することが第一。近年はさまざまな仕事を頂戴し、稽古に使える時間ばかりではなくなりましたが、今も毎日の稽古を中心に日々を送っていることに変わりはありません」

大学生への稽古

京都市立芸術大学、同志社大学の能楽部に所属する大学生への稽古も日課の一つ。

謡本

謡本。能の台本に節付けを示す譜を記したもの。同じ詞章であっても、流儀によって節付けが異なる。

ご自身の舞台公演では拠点である京都に限らず、東京をはじめ全国各地への移動も多く、また大学での講義や公演の準備などの事務的な仕事もあり、その合間を縫って日々の稽古を欠かさないようにしているそうだ。稽古では具体的に何をするのか。

「一般のかたへのお稽古は、まず謡曲を謡うこと、そして仕舞で能の所作を学んでいただきます。謡は、謡本というテキストがありまして、初めてのかたへの指導は表記の読み方から始めます。舞は基本的な型や足の運びなどを教えます。玄人である我々能楽師の稽古は謡も舞も完全に暗記していることが前提にあります。そのうえで練り上げていく、覚えたことを日々反復練習するんです。自分の舞台をよりよくするために、練り上げる作業に時間を使っています」

金剛能楽堂の庭

金剛能楽堂の庭で。師弟関係も舞台を下りるとパパと息子に。衣装協力/PAPAS(龍謹さん分)

現在は2人のご子息がいる。父親として、師匠として、金剛流の未来を担う2人にどのようなレールを用意するのだろうか。

「私自身、記憶がある以前から稽古を始めていますので、能の舞台に立つことへの抵抗はありませんでした。きっと私の長男も次男も同じで、大人になったときに今経験していることは記憶から薄れているだろうと思いますが、物心がつく前から舞台を経験することは、後に大事になってきます。我々は“毛穴から入る”という言葉をよくいいますが、私は幼少期には主に子方として舞台に上がり、中学生以降は本業のシテ方の舞台と並行して、太鼓、小鼓、笛、大鼓の順に能の楽器である四拍子をひととおり学びました。」

うたの稽古

謡の稽古のため、大鼓、小鼓、太鼓の代わりに張扇で拍子盤を打って拍子をとる。

「父からは能楽師になることを強要されることはなかったので、うまく運んできてもらったのかなと思います。能楽師の修業は、例えば元服である15歳前後で“初面をかける”など年齢に応じて定められた道標があり、それを一つずつ階段のように上っていってほしい。そして何よりも能のことを好きになってもらいたいですね」

2022年7月には自身の芸の研鑽と向上のために発足した「龍門之会」の10回目の公演が控えている。龍謹さんと長男の謹一朗君にとって、大きな節目となりそうだ。

(次回へ続く)

公演情報
「第十回記念 龍門之会」
2022年7月31日 14時開演
会場:金剛能楽堂
演目:能『三輪 神道』ほか

「金剛定期能」
2022年9月25日 13時30分開演
会場:金剛能楽堂
演目:能『山姥 白頭』ほか

「アートキャラバン長崎 ~島原に息づく能~」
2023年1月22日 14時開演
会場:島原文化会館 大ホール
演目:能『沖宮』
金剛能楽堂:075(441)7222

※その他の公演スケジュールは金剛龍謹公式ウェブサイトでご確認ください。
公式サイト:http://www.kongou-net.com/ryumonnokai/

〔特集〕能の世界へ導く「金剛流の魅力」(全3回)

撮影/本誌・坂本正行 構成・文/山下シオン 企画協力/金剛能楽堂、アトリエシムラ、岩崎アキ子

『家庭画報』2022年8月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。
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