アート・カルチャー・ホビー
2017/09/19
初心者の私は、入部当初はもちろん一番下手な部員でした。初ラウンドのスコアは120を超えていたと思います。
真っすぐ飛ばすどころか球を打つこともままならない状況に、追い打ちをかける厳しい体育会のルール。私のゴルフ人生のスタートは「過酷」でした。
学生の基本は「セルフプレー」。炎天下のなか、クラブの入った重いゴルフバッグを背中に担ぎ、球を打ったらとにかくダッシュ! 一番下手なのに、先輩よりも常に先を行き、ピンを抜き、ボールを拭かなくてはならないので猛ダッシュ!!
ヘトヘトのドロドロになってラウンドが終わっても、下級生の「仕事」は寝るまで続きます。朝は、同部屋の先輩を「お起こし」するために先に起きなくてはいけません。目覚まし時計を鳴らすなんて御法度! 先輩を起こさないよう静かに先に起きるには、一体どうすれば良いか?
編み出した方法は、「ポケベルのアラームをバイブレーション設定し、ヘアバンドで額につけて寝る」という方法でした。おデコにポケベルを乗せ、ポケベルが落ちないように寝返りを打たない。寝ているときも過酷でした。
今思えば笑い話ですが、当時は必死にやっていた体育会ルール。「先輩の車に乗せていただくときには、座席の背もたれに背をつけてはいけない」という変なルールもありました(笑)。
そんなこんなで、球を打ち続け走り続けているうちに、ベストスコアは「79」になっていました。
大学3年の冬、アナウンサー試験を受けました。大学では「体育会ゴルフ部」に所属していた私。試験を受けにいくと、ほとんどがアナウンススクールに通っていたり、すでに学生キャスターとしてテレビに出ていた「経験者」ばかりで、面食らいました……。
呆然としている私を見兼ねた、ベテラン男性アナウンサーの方が「君は体育会ゴルフ部なんだろ? それなら大きな声は出せるだろう。とにかく何でもいいから大きな声を出してみろ」と声をかけて下さいました。 そうか! 周りの人達は、ホンモノのアナウンサーのように原稿も上手に読める。とてもかなわないけれど、その人達よりも大きな声を出すことなら出来るかもしれない!!と思い、誰よりも大きな声を出すことを目標に試験に臨みました。
いざ面接を受けると、大抵の第一声が
「ベストスコア幾つ?」
面接官の皆さまとゴルフ談議をしているうちに、いつの間にかアナウンサー試験に合格していました。
ゴルフ好きなオジ様が多いとは、聞いていたけれど、想像を超えていました……。
もしゴルフをしていなかったら、アナウンサーになることはできなかったと思います。 ゴルフという世の中のオジ様たちとの最強コミュニケーションツールに、心の底から感謝しました。入社後も、ゴルフができるということで人間関係が広がりました。今も仕事関係はもちろん、そうでない方とも、ゴルフのおかげで親交を深める事ができています。
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