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野口聡一さん「今、宇宙に生き方のヒントがある」。人間関係を円滑にする“宇宙視点”のアドバイス

多様性(ダイバーシティ)の尊重が強靭性(レジリエンス)を高める

人との関係を円滑にするために有効なのが「アイスブレイキング」です。直訳すると「氷を解かす」という意味で、初対面の人同士が緊張を解きほぐすときに使う手法を指します。

この手法を身近にたとえるなら、かけ合い漫才の最初の“つかみ”。ステージに出てすぐ、ほんのひと言でワッと客席を沸かせ、注目を集めてから本題に入るという、あの方法です。

日常のコミュニケーションではいいたいことを伝えるだけでなく、伝える雰囲気づくりも大事だということですね。

以前、乗組員3人が「クルーの中でいちばんファニー(面白い)なのは聡一だ」といってくれたことがありました。自分でいうのはおこがましいのですが、私の“ひと言で笑わせる力”を評価してくれたんだと思います。これは幼い頃に接した関西文化圏の名残かもしれません。「オチがないと終わらない」というしゃべり癖は今も健在です。

また、仲間との距離を縮めるには、食事中や運動中など互いにリラックスできる状況を利用するのも効果的です。なお、このことと相反しますが、相手との距離を縮めるのと同じくらい、近すぎない距離を意識して保つことも大切です。

どんなに社交的な人でも、一人になりたい時間は必ずあります。宇宙ステーションも、そのほとんどは共用スペースにあてられていますが、寝室用に個室が確保されています。他人をリスペクトし、むやみに個室をノックしないことは、クルー同士の暗黙の約束事でした。

今、ダイバーシティという言葉がよく使われます。多様性を尊ぶダイバーシティの発想こそ、困難な状況を乗り越えるレジリエンス(強靭性)につながります。さまざまなバックグラウンドを持つ人たちの多様性を認め、尊重し、受容しながらチームとしてのレジリエンスを高めていくこと。

3度の宇宙滞在を乗り越えた今、それこそがポスト・コロナの時代を切り開く力になると私は思います。

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取材・文/冨部志保子 取材協力/JAXA NASA 参照文献/『宇宙飛行士 野口聡一の全仕事術』(世界文化社刊)

『家庭画報』2022年1月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。

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