美容・健康

健康長寿は実現できる。生命科学者に聞いた「細胞」から健康を保つアドバイス

加齢によりリサイクルシステムにも不具合が。認知症や生活習慣病などの引き金にも

「ところが、オートファジーは、年齢とともに低下してしまう」と吉森先生。オートファジーとは細胞内の不要物を回収する仕組み。滞ると、どんなことが起きるのでしょうか?

「代表的な例が『認知症』です。脳の神経細胞の多くは一生涯、生まれ変わらないため、細胞内の入れ替えが滞ると老廃物が蓄積し続けます。結果として細胞の活動に支障をきたし、神経細胞が死んでしまうので認知症が起こります。ほかに生活習慣病もオートファジーの低下が関係することが報告されています」(吉森先生)

加齢とともに、細胞内に古くなったたんぱく質が溜まりやすくなる……できることならキレイに掃除をして、いつまでもいきいきとしたい! ここで最新のアンチエイジング、「細胞再活性化」の出番です。

健康も病気も、細胞一つから始まる

「日本は超高齢社会になって久しいですが、平均寿命と健康寿命にはおよそ10年の差が。介護を必要としない健康長寿を、オートファジーをはじめとする細胞生物学や医学の進歩で叶えることは可能だと考えています。

例えば、認知症やがんのような加齢性疾患は薬で抑えるべく世界中で研究が進められていますし、健康を維持・増進するための食品成分の研究開発も盛んに。オートファジーを活性化する食品成分として、ざくろやベリーに由来するウロリチンなどが発見されています。

さらに、オートファジーを含む最先端の老化研究から、エイジングケアに効果的な生活習慣がわかってきました」(吉森先生)。

つまりこれらが、衰えてきた細胞を再び元気づける最新のアプローチ、「細胞再活性化」ということ。「生活習慣」なら今すぐ取り入れられそう!

最先端のオートファジー研究者が注目する科学的な健康法とは?

「オートファジーを高めるアンチエイジングな生活習慣として研究結果が出ているのは、“腹八分目”、“脂っこい食事はほどほどに”、“適度な運動をする”こと。目新しさはゼロな上に面白くない!と落胆された方もいるでしょう(笑)」

いわば、「昔から言われている健康的な生活習慣」だ。

「しかし、『なんとなくいい』と言われてきたことが、細胞レベルで証明されたと聞けば、むしろやる気が出ませんか?

さらに『病は気から』、これも科学的な解明が進んでいることから、『人生に対してポジティブなイメージをもち、節度ある生活を心がける』とまとめることができそうです」と吉森先生。

古きよき教えが現代科学で検証され、細胞レベルの価値が明らかに──まさに21世紀の温故知新です。

「細胞が元気なら、体が元気」ということ

「喉が痛い、風邪っぽい、そんな体調不調も、元をただせば細胞の不具合。普段の暮らしで細胞に思いを寄せることは難しいかもしれませんが、『細胞とは何か』『細胞で何が起きているか』を知っておくことで、さまざまな健康情報に接したとき、科学的な思考に基づいて行動できるのです。

細胞生物学者である私自身、『温故知新』の生活習慣を実践したり、エビデンスのある食品成分を摂ることで、体の最小単位である細胞の機能を維持できる。そうすれば、劣化や老化は宿命ではなくなると信じています」(吉森先生)

〔お話ししてくれたのはこの方〕
大阪大学大学院生命機能研究科教授、医学系研究科教授 吉森 保先生

「著書『ライフサイエンス 長生きせざるをえない時代の生命科学講義』(日経BP)では、科学的に考えることや細胞、オートファジーをわかりやすく解説しました。細胞を学ぶ入門編として『はたらく細胞』シリーズ(講談社)もおすすめです。いずれ、細胞内で機能するたんぱく質についてもわかりやすく紹介したいですね」(吉森先生)

吉森 保/Tamotsu Yoshimori

大阪大学大学院生命機能研究科教授、医学系研究科教授。医学博士。国立基礎生物学研究所(大隅研究室)、国立遺伝学研究所等を経て現職。専門は細胞生物学。文部科学大臣表彰科学技術賞(2013年)、日本生化学会・柿内三郎記念賞(2014年)、紫綬褒章(2019年)ほか受賞多数。


『ライフサイエンス 長生きせざるをえない時代の生命科学講義』(吉森 保著・日経BP)

※1 厚生労働省 日本人の食事摂取基準(2020年版)より
※2 細胞内のたんぱく質の分解には、プロテアソームという酵素による分解もあるため

写真/アフロ、PIXTA 取材・文/佐野有子

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