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アール・ヌーヴォーのガラスの器、ガレとドームの「技法」鑑賞

ガレとドームが誘う芸術のある暮らし 最終回(全2回) アール・ヌーヴォーを代表する工芸家エミール・ガレとドーム兄弟。今回は希少なガレ初期の作品をはじめ、暮らしの空間に寄り添うガレとドームのガラス器をご紹介します。前回の記事はこちら>>

ガラスの中に花開く、ガレとドームの「技法」鑑賞

ガレとドームの「技法」鑑賞

自然をつぶさに観察し、細やかな描写に心血を注いだガレやドーム兄弟は、生涯をかけて多様な技法を探求してきました。

何層ものガラス層を重ねて生まれる複雑な色味の被せガラス、ガラス質の絵の具を低温で焼いて着彩するエナメル彩、ガラスに別のガラスの塊を貼りつけて浮き彫りの状態を作り出すアプリカシオンなどがあり、いずれも高度な技術を要する類い稀な加飾法です。

なかでも、陶芸、木工芸においても多様な作品を創出したエミール・ガレは、マルケットリーと呼ばれる寄木細工を指す象嵌技術をガラス工芸に導入し、独自のスタイルを模索。一方、愛らしく精緻な花の描写の作品を残したドーム兄弟は、混色層を作り出すヴィトリフィカシオンなどの手法で表現の世界を深化させています。

ガラスの素地に立体的で流動的な加飾を取り入れ、さらに一つの作品の中でいくつもの技法を重ねて用いることで、ガラスを独創の工芸へと押し上げた両者。

彼らの多様な技法が生み出した美しくたおやかなガラスは、光によって刻々と変化する色彩や輝きが魅力です。手に取って好きな光にかざし、ガラスのさまざまな表情を楽しんでみてはいかがでしょう。

ガレとドームの4つの「技法」

1.多層の重なりが生む深遠の美「被せガラス」

ガレとドームの「技法」鑑賞

違った色のガラスを重ねて成形する難易度の高い技法。グラヴュール(手彫り)やエッチングで上層部を削り、下地色とのコントラストで装飾効果を生んでいる。

ガレとドームの「技法」鑑賞

コブシ文ランプ
ガレ

1918〜1931年 径27×高さ42センチ アートとしても照明としても楽しめるランプはガレの代表作の一つ。光を通して見られる陰影のある花模様は華麗にして神秘的。

2.色ガラス片による比類なき技法「マルケットリー」

ガレとドームの「技法」鑑賞

家具装飾の象嵌技法を応用したガラス象嵌。ガラスの素地に上から異なる色のガラスを重ねる。陶芸や木工芸も手がけたガレ独自の技法。文様の表面にはグラヴュールを施している。

ガレとドームの「技法」鑑賞

蝶文花器
ガレ

1900年頃 幅16×奥行き12×高さ40センチ 蝶の文様と下地色のコントラストが美しい作品。アートディレクターとしてのガレの感性と職人の達人技の連携の所産といえる。

3.表情豊かな薄片のアップリケ「ラメル」

ガレとドームの「技法」鑑賞

ラメルとはガラスの薄片のことで、それを素地に部分的に被せガラスにする加飾技法。花の一部分に用いるなどして作品全体のポイントとする、ドーム社の技法の一つ。

ガレとドームの「技法」鑑賞

薔薇文花器
ドーム

1910年頃 径8×高さ18.8センチ バラの花弁の重なりをリアルに描き出した花器。同じ花の柄でもガレと違い、自然が素直に描写され、優しい色調と風合いが心を和ませる。

4.ドームオリジナルの混色層を生み出す手法「ヴィトリフィカシオン」

ガレとドームの「技法」鑑賞

溶解したガラス素地に粉末状の色ガラスをまぶしつけ、炉に戻して再加熱することで表面にマーブル状の薄い混色層を作り出す技法。重ねる色によってさまざまな表情が生まれる、ドーム社が特許を持つ加飾方法。

ガレとドームの「技法」鑑賞

スミレ文鉢
ドーム 

1905年頃 幅19.6×奥行き19.4×高さ9センチ スミレの姿を写実的に表現した鉢。ドーム社があるナンシーは国際的な園芸都市であり、移ろう四季を花で表した作品が多く見られる。

Information

2021 アール・ヌーヴォー魅惑の煌めき
ガレ・ドーム ガラスの世界展

大阪市北区角田町8-7

TEL 06(6361)1381
開園時間 10時〜20時(最終日は18時閉場)
会期 2021年9月22日(水)〜27日(月)
会場 阪急うめだ本店9階 阪急うめだギャラリー
  • 今回ご紹介した作品をはじめとする、エミール・ガレとドーム兄弟のガラス作品をおよそ90点集めた展覧会。ガレの希少な初期の作品、ドームの可憐な花器など、厳選した作品を一堂に展開。すべて販売もされる。入場無料。

オーギュスト・ドーム(1853〜1909)
アントナン・ドーム(1864〜1930)

ガレとドームの「技法」鑑賞

ガレに続くアール・ヌーヴォーを代表するガラス工芸家。ナンシーに創業した日用ガラスの工場を父、ジャン・ドームが1878年に買収し、ドーム社を創業。兄、オギューストが経営、弟、アントナンが制作を主導し、ガレの活躍やパリ万博に刺激を受け、1891年頃から工芸ガラスに注力するようになる。芸術家集団ナンシー派の才能豊かな芸術家をデザイナーとして登用し、花の装飾やノスタルジックな風景に代表されるガラス作品を生み出す。


〔特集〕ガレとドームが誘う芸術のある暮らし

01 自然への温かなまなざし、暮らしに溶け込むガレの花器

02 ガラスの中に花開く、ガレとドームの「技法」鑑賞


この特集の掲載号
『家庭画報』2021年10月号

『家庭画報』2021年10月号

撮影/森山雅智 取材・文/西村晶子 撮影協力/イムラ アート ジェム 川 SEN 花政

『家庭画報』2021年10月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。

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