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原田マハさんの新作小説『リボルバー』。舞台化も見据えた執筆の裏側をインタビュー

2021.09.06

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〔今月の本/巨匠の人生〕
『リボルバー』原田マハ 著

原田マハさん

原田マハ
1962年東京都生まれ。森美術館設立準備室勤務からMoMAへの派遣を経てフリーキュレーターとして独立。2005年小説家デビュー、2012年『楽園のカンヴァス』(新潮社)で山本周五郎賞受賞。2017年『リーチ先生』(集英社)で新田次郎文学賞受賞。

19世紀と現代を行き来しながらゴッホの死の謎に迫る


ゴッホの《ひまわり》の上に“リボルバー”のタイトル文字。一見無関係に思える両者の繫がりを追う、原田マハさんの新作が評判を呼んでいる。


「前作『たゆたえども沈まず』は、史実をベースとしたゴッホ兄弟のフィクションの物語です。その後、そこではあまり深く追えなかったゴッホとゴーギャンのエピソードをもっと掘り込んでみたいという気持ちになりました。この謎を私なりの解釈で小説にしてみたいし、もしかすると戯曲にできるかもしれないと考えたのです」

そのタイミングで、戯曲を書いてみないかというオファーがあったという。「憧れのパルコ劇場からの依頼でした。お引き受けしたい気持ちは大きかったのですが、だったらまず原作となる小説を書いて、そのうえで戯曲に挑戦したい。そうお返事したところ、ご快諾いただきました」

こうしてゴッホとゴーギャンについての取材をスタートさせた2019年、運命ともいえる出来事に出合った。

「ゴッホが自殺に使ったとされるピストルがパリで行われるオークションに出品されるという情報を得て、落札の瞬間に立ち会ったのです。そこで、“リボルバー”をめぐってゴッホたちが生きた19世紀と21世紀の現代が交差する物語を書こうとひらめきました」

パリの小さなオークション会社で働く高遠冴のもとに、“ゴッホを撃ち抜いたリボルバー”が持ち込まれるところから物語が始まる。19世紀のパートでは、ゴッホとゴーギャンの関係、そして彼らを愛し、翻弄される人々のドラマが生き生きと描かれる。

「約1年かけて小説を完結させ、その後、戯曲に取り組みました。舞台化のスケジュールがすでに決定していたので、待ったなしでしたね。戯曲を手がけるのは初めてでしたが、自分が紡いだ言葉が演者によって身体化されていくのが新鮮で、とてもいい体験でした」

2021年5月に小説が刊行され、舞台は関ジャニ∞の安田章大さん主演で7月に東京で行われた後、8月15日まで東大阪市文化創造館にて公演された。

パリと蓼科を行き来しながら創作を続けている原田さん。パンデミックで暮らしはどう変化したのだろうか?

「2020年、感染が広がりつつあった頃に日本からパリに移りましたが、あっという間にロックダウンになり、家の中に閉じこもって息を殺していました。あの2週間は生涯忘れることはないでしょう。その後日本に戻り、蓼科の自宅にいます。旅ができない、美術館へも行けない、人とも会えない。そんな中で物語を書き、発信することの使命を改めて感じています。『リボルバー』は、この時期に書いたからこそ、物語の深度が増したと感じています」

リボルバー

『リボルバー』原田マハ 著 幻冬舎 装画/フィンセント・ファン・ゴッホ《ひまわり》1888年(ロンドン・ナショナル・ギャラリー蔵) 装丁/重実生哉

ある女性によってオークション会社に持ち込まれた1丁のピストルから、ゴッホとゴーギャンの関係性、そしてゴッホの死の謎が解き明かされる、アート・ミステリ長編。

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構成・文/安藤菜穂子 撮影/藤井 保(人物) 本誌・中島里小梨(本)

『家庭画報』2021年9月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。
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