インタビュー・レポート

草刈正雄さん、芸能生活50年をありのままに語る。初のエッセイ『ありがとう! 僕の役者人生を語ろう』

『家庭画報』2020年新年号でもご登場いただいた人気俳優・草刈正雄さんが初の書き下ろしエッセイ『ありがとう! 僕の役者人生を語ろう』を上梓しました。資生堂CM「MG5」の鮮烈デビューから、知られざるどん底の時代、NHK大河ドラマ「真田丸」での再ブレイク、NHK朝の連続テレビ小説「なつぞら」のエピソードなど、芸能生活50年のすべてを、ありのままに綴った貴重な1冊となりました。

草刈正雄

運命的な出会いで奇跡のデビュー

――2020年は、草刈さんにとって節目の年だそうですね。

17歳でこの世界に入ってから、はや50年。半世紀が経ちました。

――最初はモデルとしてデビューされたんですよね。

そうですね。でもモデルはあまり向いていなかったというか……九州の硬派な土地柄(現在の北九州市小倉)に生まれ育った僕には、「女性モデルと肩を組んで」とか「手をつなげ」と急に言われてもカメラマンの望むような動きが全くできなくて。よく怒鳴られましたね(笑)。

――怒られている姿があまり想像できませんが。

この見てくれですから、みなさんどうも何でもスマートにこなすように思われるのかもしれませんね。でも、本当の僕はどうしようもなく不器用なんです。東京に出てきたものの「本当にやっていけるのか」不安で不安で仕方がなかった。

――本の中で、「不思議なことに、ここぞということで必ず思いもかけない“出会い”に恵まれ、救いの手が差し伸べられてきたのです。」とありますが、その不安を取り除いてくれるような出会いは。

最初の運命的な出会いは、18歳の時に出演した資生堂さんの男性化粧品「MG5」のコマーシャルでしょうね。「団次郎さんの弟分に当たるモデルを探している」という話があって、すでにオーディションも進んでしまっていたのですが、当時、資生堂のコマーシャルのほとんどを手がけていた天才CMディレクターの杉山登志さんがたまたま会社におられて、カメラテストをしてくださった。

その結果、僕を採用していただいたのです。このCM出演が決まったことは、次のステージへの大きな一歩になりました。

――YouTubeでCMの動画を見ましたが、まさにイケメン、そして爽やかですね。さぞやキャーキャー言われたのでは。

「人気」というものを実感したのは全国の資生堂さんの販売会社で僕のサイン会を行ったときでしょうね。自分の予想よりもはるかに大勢の女性たちが集まってくださっていたのを思い出します。
ともあれ、僕にとってはこのCMが全国放送だということが、とにかく嬉しかった。故郷の母に僕の活躍を見てもらって安心してもらえましたので。

人気急上昇!自信をつけていく日々

――事務所にも問い合わせが殺到したのでは。

そうでしたね。「あのCMに出ているヤツは誰だ」という問い合わせがたくさん寄せられたようです。「レコードを出してみないか」「ドラマに出てみないか」という話も持ちかけられるようになり、無名の新人モデルだった僕の身辺が急に騒がしくなりましたね。

――どんなオファーがきましたか。

たとえば、映画監督の篠田正浩さんが『卑弥呼』という作品で使ってくださいました。岩下志麻さん演じる卑弥呼の弟役です。使われている言葉も難しくて一回では理解できず、撮影でも怒られっぱなし。自分が未熟なために消化できないまま撮影が終わってしまったのが少々悔やまれました。

でも、役者として仕事ができる機会を与えていただき、感謝してもしきれません。

――そこから、色んな巨匠たちとお仕事をされるようになった。

篠田監督の『卑弥呼』を皮切りに、出目昌伸監督の『神田川』『沖田総司』、岡本喜八監督の『青葉繁れる』、今井正監督の『あにいもうと』、市川崑監督の『火の鳥』などなど……名だたる監督たちとご一緒させていただきました。

今にして思えばこれほど幸せなことはなかったと思います。まさに奇跡のように恵まれた「出会い」の積み重ねでした。

――テレビからもお声がかかったのでは。

そうですね。24歳の時にはNHKの大河ドラマにも出演させていただけるようになりました。『風と雲と虹と』です。加藤剛さん、緒形拳さんと共演し、私の役どころは加藤さん演じる平将門の側近の役でした。

この頃、演じることの喜びがどんどんわかってきて充実感を感じ始めるとともに、自信をつけていきました。

――資生堂のCMでデビューされたのが1970年。70年代はトップをひた走っていたということですね。そして、80年代に入って最初の映画があの大作『復活の日』。

オファーをいただいたのは公開となった1980年の二年前でしたが、当時、映画界を席捲していた角川映画からのお誘いでしたから興奮しましたね。

南極をふくめ海外ロケだけで半年以上、総製作費25億円というスケールの大きな作品でした。オリビア・ハッセーさんなどさまざまな国籍の役者さんたち、海外スタッフとの仕事は僕にとって大きな衝撃となりました。

――角川春樹さんとは『汚れた英雄』でまたお仕事を。

角川春樹さんはスケールの大きな方でした。「お前が監督を決めていいよ」と言われたときには面食らいましたが(笑)とても良い経験をさせていただきました。

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