インタビュー・レポート

歌舞伎俳優・中村隼人さんが考える「主演の覚悟」とは?

『家庭画報』2020年1月号に掲載された特集「歌舞伎界の若き獅子たち」。そこでお伝えしきれなかった5人の歌舞伎俳優の皆さんの貴重なお話をお届けします。2015年の同企画にご出演いただいてから5年の間に経験したこと、実感したことなどを通して、それぞれの素顔を垣間見ることのできる素敵な機会です。前回の記事はこちら>>

写真左から、中村児太郎さん(記事はこちら)、中村隼人さん、尾上右近さん(記事は2月18日公開予定)、中村壱太郎さん(記事は2月21日公開予定)、坂東巳之助さん(記事は2月25日公開予定)。

5人の若獅子たちが語る“今”へと導いた3大トピックス
第2回 中村隼人さん

新作歌舞伎『NARUTO-ナルト-』では、坂東巳之助さんとともに主演を勤め、さらにスーパー歌舞伎Ⅱ『新版オグリ』では市川猿之助さんとダブルキャストで主演に抜擢されるという大躍進を果たした中村隼人さん。舞台に限らず、NHKの土曜時代ドラマの主演でも人気を集めている注目の存在です。

中村隼人

2019年10月、新橋演舞場『新版オグリ』の小栗判官。

TOPICS1
玉三郎さんの助言が導いた決断

僕は高校2年生のときに玉三郎のお兄さんの舞踊公演で『積恋雪関扉(つもるこいゆきのせきのと)』の良峯少将宗貞という大役を相手役で勤めさせていただきました。当時は女方の役を演じることが多かったのですが、玉三郎さんから「あなたは立役でいきなさい」と仰っていただき、立役で演じると決めました。それがきっかけで僕の今があるので、ほかにも仰っていただいたお言葉はよく覚えています。

例えば「芝居は、自分がしゃべっていないとき、自分が動いていないときに一番役の性根が出る」という歌舞伎を演じる上で大切なことも教えていただきました。

中でも老子の「上善如水(上善は水のごとし)」は、「水のように柔軟性を持って生きなさい」という理想の生き方を示してくださったお言葉。「水がそうであるように、争うことなく低いところに留まるべき。人気が出ても謙虚さを忘れないようにしなければならない。しかも水は人間にとってなくてはならないものだから、あなたもお客さまにとってなくてはならない役者になりなさい」とも仰ってくださいました。そのときから、このお言葉は、僕にとって大切なものになりました。

TOPICS2
猿之助さんから教わる主演の覚悟

市川猿之助兄さんと初めて出会ったのは2014年の『獨道中五十三驛(ひとりたびごじゅうさんつぎ)』でした。大きなお役をつけていだたいたので、自分の引き出しのなさを痛感した思い出があります。おかげでいろいろな気づきを得て、明確に役作りや演じることに取り組めるようになりました。

歌舞伎は古典歌舞伎で型をしっかりと学んでおかなければ、新作の歌舞伎を演じる時には通用しません。その後もスーパー歌舞伎Ⅱ『ワンピース』で猿之助兄さんとご一緒させていただき、314公演もの回数を重ね、僕が演じたサンジという役はとても愛着のある役となりました。

猿之助兄さんからは、生き方、演じ方、人とのコミュニケーションの仕方など、すべてを見て学ばせていただいています。スーパー歌舞伎Ⅱ『新版オグリ』でも、猿之助兄さんと同じオグリを勤めさせていただくことになり、大先輩方が出ている舞台を芝居で引っ張っていかなければならないということに直面しています。

『NARUTO-ナルト-』のときは坂東巳之助さんがいたから2人でやっていたことを今度は僕一人でやらなければなりません。主演という立場は、芝居のバランスも見なければならないですし、自分を常に客観視しなければなりません。猿之助兄さんから「孤独でしょ?」といわれましたが、そのことを日々実感しています。自分にとって必要ないい経験だと思います。

TOPICS3
史上最年少の座頭として臨んだ新作歌舞伎

新作歌舞伎『NARUTO-ナルト-』は僕にとって、初めての座頭公演でした。24歳の座頭は、史上最年少だそうです。上演の時期がちょうど同じ漫画原作のスーパー歌舞伎Ⅱ『ワンピース』が大当たりした直後だったので、二番煎じになってはいけないと思い、巳之助さんとともに台本の段階から話し合って作っていきました。

新作歌舞伎は古典と違って、すべてを一から作っていく作業から始まります。一つの作品にどれだけの人が関わっていて、どのように作り上げていくのかを改めて深く学ぶきっかけとなりました。そして、公演を成功させるために必要な知識を得ることができました。

初演はありがたいことに毎日満員で、2019年には南座で再演させていただき、2020年も4月に名古屋・御園座での公演が決まりました。猿之助兄さんから「公演を、2か月、3か月と続けることの難しさを知ってほしい」と仰っていただいたことがよく理解できましたし、京都公演の結果が名古屋の再々演の実現に繋がったと思うので、僕にとって大きな自信となりました。

中村隼人/Hayato Nakamura

1993年生まれ。父は二代目中村錦之助。2002年歌舞伎座『菅原伝授手習鑑 寺子屋』の小太郎で初代中村隼人を名乗り、初舞台。

スーパー歌舞伎Ⅱ『新版オグリ』

2月4日(火)〜25日(火)※13日(木)は休演日。
劇場:博多座
2月5~6、8~9、11~12、14~15、17~18、20~21、23~24日の昼の部は藤原正清後に小栗判官で出演。
2月7、10、16、19、22、25日の昼の部と夜の部は遊行上人役で出演。

お問い合わせ/
博多座オンラインチケット https://hakataza.e-tix.jp/pc/hakataza.html

撮影/篠山紀信

構成・文/山下シオン 協力/松竹

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