インタビュー・レポート

樹木希林さん「だいたい私のやることは行き当たりばったり」

樹木 希林(きき きりん)さん

「だいたい私のやることは行き当たりばったりですから」

これまでもオリジナル脚本を通じて、さまざまな家族を描いてきた是枝裕和監督が、犯罪を拠りどころにつながっている人々のしたたかさと脆さから、家族のありようを問いかける映画『万引き家族』。

カンヌやヴェネチアなど、国際映画祭の常連作家として国内外で新作が待たれ、多くの俳優が出演を望んでいる――そんな是枝作品への参加も6作目となるように、監督が全幅の信頼を寄せているのが、家族の要となる祖母の初枝を演じた樹木希林さんだ。

連係プレーで万引きに精を出す日雇い労働者の父・治と息子の祥太、クリーニング店で働く妻・信代、JK見学店でバイトする妹・亜紀、そして年金生活者の祖母・初枝。

開発から取り残された古い平屋で身を寄せ合って暮らす3世代5人家族は、寒空の下、戸外に閉め出されていた5歳のゆりの境遇を察し、彼女を家族として迎え入れる。その日暮らしの貧しさにあっても笑いが絶えない家族の結び目は、ある出来事を機に、次第に綻びてゆき……。

「今の時代、血がつながっていればそれで家族というわけでもなくなっているし、人それぞれ、普通と思うことや価値観は違うから、こういう家族もあり得るのかなと思いましたね。監督は、ある結論に導こうというのではなく、こういう人たちが集まったとき、そこから何が見えてくるかを描いているんです」

そう話す希林さんによれば、是枝監督の映画はその場で変わっていくことも少なくないそうで、夏の海辺から始まった今回の撮影についても、“どんな話なのかよくわからないまま、衣装を着て、全員で海に行った感じだったなあ”と振り返る。

「是枝監督は(役者に)具体的な説明をしたり、動きをつけたりはしないんです。シチュエーションだけ用意されるので、役者は与えられた場にどう居ればよいのか、それぞれ自分で考えて動くわけですけど、そこでふっと出てくるもの、醸成される気配を撮っていくというか……。映像をつくる以前に人間を見ることが好きで、そこから人物を立ち上げていく監督なので、どんな状況であってもお任せできるし、とにかく信用しています」

理屈抜きで見続けていたい。是枝作品の役者さんたちには、そう思わせる佇まいがあるが、なかでも今回、記憶に残るのが、浜辺で希林さんが信代役の安藤サクラさんを見ながらつぶやくシーンだ。

「自分はもうすぐ死ぬだろうし、未来なんて何もないけれど、浜辺でとうもろこしを食べている安藤さんの、若い細胞が生きているのを見ているうちに、“お姉さん、よく見るときれいだね、顔が”ってことばが、ふーっと出てきたのね」

場のなかで、役者同士のかかわりから生じる予め用意されたものではない台詞、表情、気配から生まれる臨場感は、役者の力に委ねられる監督だからこそ撮ることができるものなのだろう。

「ただ今度の映画に集まった、監督の好きなタイプの役者を見ていると、行儀がいいのよ。みんな知性や節度、品があって、自分の分をすっと心得てしまう人たちばかりで。今後、新たなキャスティングをするときは、そう来るかと思うような、少し破綻した、違う質たちの人がいると、監督の作品に広がりが出てくるんじゃないですかね」

『万引き家族』

安藤サクラさん、松岡茉優さんは是枝組初参加。「監督の好きなタイプの役者はみんな、品があるんです。次回はいい意味で感性の鈍い、少し行儀の悪い、もう少し破綻のある人材がいると、作品に広がりが出るんじゃないでしょうか」。

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