インタビュー・レポート

坂東巳之助さんが目指すのは「歌舞伎そのものを楽しんでいただくこと」

『家庭画報』2020年1月号に掲載された特集「歌舞伎界の若き獅子たち」。そこでお伝えしきれなかった5人の歌舞伎俳優の皆さんの貴重なお話をお届けします。2015年の同企画にご出演いただいてから5年の間に経験したこと、実感したことなどを通して、それぞれの素顔を垣間見ることのできる素敵な機会です。前回の記事はこちら>>


写真左から、中村児太郎さん(記事はこちら)、中村隼人さん(記事はこちら)、尾上右近さん(記事はこちら)、中村壱太郎さん(記事はこちら)、坂東巳之助さん。

5人の若獅子たちが語る“今”へと導いた3大トピックス
第5回 坂東巳之助さん

2015年に上演されて大ヒットしたスーパー歌舞伎Ⅱ『ワンピース』で、まったく異なる3役を演じ分けて圧倒的な存在感を放った坂東巳之助さん。「新春浅草歌舞伎」では古典の大役を務め、自らの可能性にも挑んでいます。冷静かつ鋭い視点から、巳之助さんが目指す歌舞伎について語っていただきました。

坂東巳之助
2019年10月、歌舞伎座『廓三番叟(くるわさんばそう)』の太鼓持。

TOPICS1
役を昇華する作業を経験した新作歌舞伎

歌舞伎は生涯を通して同じお役を何度も勤める演劇です。スーパー歌舞伎Ⅱ『ワンピース』では、4年という短期間で同じお役をさせていただくことができたので、本来なら数年、あるいは何十年に1度くらいで経験を重ねていくところをとても速いスピードで役を昇華していく作業を覚えることができました。

新作での役作りでも『ワンピース』の場合は原作のキャラクターがいますので、古典歌舞伎で先輩方が作り上げた人物を演じるのと似ているのかなと思いました。とはいえ原作通りの台詞を話すわけではありませんので、だからこそキャラクターの性根はブレてはいけないと思って演じました。

TOPICS2
大役の学びを得る「新春浅草歌舞伎」

「新春浅草歌舞伎」では毎年、大きなお役に挑戦するという貴重な経験をさせていただいていて、自分にとって大きな糧となっています。

2016年には『三人吉三巴白浪(さんにんきちさともえのしらなみ)』の大川端庚申塚(おおかわばたこうしんづか)の場でお坊吉三を初役で勤めさせていただきましたが、その後の2019年10月に歌舞伎座の舞台でも同じ役をやらせていただくことができました。ですから、どのお役も今後も演じさせていただけるきっかけとしてつながっていけたらいいなと思いながら、浅草歌舞伎の舞台に立っています。

2020年は『茶壺』と『仮名手本忠臣蔵』七段目の寺岡平右衛門を勤めさせていただきました。『茶壺』は大和屋の大切な演目ですし、平右衛門は父が同じ新春浅草歌舞伎で演じているので、自分もやらせていただけるのが嬉しかったです。僕たち若手が頑張ることは当たり前。だからといって公演では頑張っている姿をご覧に入れるのではなく、お客さまには作品そのものを楽しんでいただけるようにと思って、日々舞台に立ちました。

TOPICS3
父の死、結婚、そして子どもの誕生

この5年ほどの間に、公私ともに想像もしなかったことが次々と起こりました。

父が亡くなったことで、それまで父がやってくれたり、守ってくれていたりしていたことが一切失われてしまいました。当時24歳だった僕は、自分の人生を自分でコントロールしなければならないという境遇になりました。

一般的には社会人として独り立ちしていなければならない年齢だったと思いますが、歌舞伎界では父の後ろ盾があることはとても大きなことなので、父の死が大きな痛手であったことは確かです。しかし強制的に親離れさせられたことで多くのことを経験できましたので、自分にとって良かったと今は思っています。

5年前の自分には、自分が結婚するとも、子どもができるとも、スーパー歌舞伎Ⅱ『ワンピース』への出演や『NARUTO-ナルト-』で主演を演じることも想像できませんでした。何が起きるかわからないのが人生であり、だからこそ面白いのだと思います。それが楽しめたらと思います。

坂東巳之助/Minosuke Bando

1989年生まれ。父は10代目坂東三津五郎。1995年歌舞伎座『倭仮名在原系図(やまとがなありわらけいず)』の繁蔵と『寿靭猿(ことぶきうつぼざる)』の小猿で二代目坂東巳之助を名乗り、初舞台。

「三月花形歌舞伎」

3月2日(月)~26日(木)
劇場:明治座
昼の部 『菅原伝授手習鑑 車引』の梅王丸、『一本刀土俵入』の堀下根吉
夜の部 通し狂言『桜姫東文章』の入間悪五郎で出演。

お問い合わせ/
明治座ホームページ https://www.meijiza.co.jp
チケットWeb松竹 http://www1.ticket-web-shochiku.com/t/

撮影/篠山紀信

構成・文/山下シオン 協力/松竹

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