インタビュー・レポート

役所広司さんインタビュー「共感したのは“正義感”。生きづらさを抱えた人物でした」

映画『すばらしき世界』

役所広司さん

今村昌平監督の『うなぎ』に続いて演じた、元服役者という役

2000年代半ばの『SAYURI』『バベル』に始まり、19年には日中合作映画『オーバー・エベレスト 陰謀の氷壁』に主演するなど、その演技力で国内はもちろん、国際映画祭でも受賞を重ねている役所広司さん。

佐木隆三さんのノンフィクション小説『身分帳』を原案に、西川美和監督が手がけた最新主演作『すばらしき世界』で、役所さんは、人生の大半を刑務所で過ごし、世間に出た元服役者・三上正夫という男を演じている。

「僕は原作を先に読んでいたのですが、佐木さんは取材された事実を忠実に書いていらっしゃるので、原作の山川(※映画では三上)に対して観る人はどこで共感できるか、少し不安があったんです。でも30年前の話を現代に置き換え、主人公の、短所だけど長所にもつながる人間的な部分を落とし込んだ監督の脚本からは、三上という男への愛情を感じました」

旭川刑務所で刑期を満了し、出所した三上。身元引受人の弁護士夫妻、近所のスーパーの店長、好奇心から彼に近づいた若いテレビマンらに手を差し伸べられ、今度こそ真っ当に生きようとするもままならず、感情が爆発してしまう。

そんな三上の獰猛さ、それとは裏腹な繊細さを、役所さんは肉体と行動で表現している。

「中途半端な刺青と体の傷が、この男の人生を表現しているというか。三上が普通にその場にいても、刺青と傷を見ただけで、彼のこれまでの人生が観る人に伝わる部分はあったと思います」

刻まれた傷が暗黙裡に伝える荒々しさの半面、整理整頓のゆき届いた部屋や所内で身につけたミシン仕事の丁寧さ、その歩き方に三上の几帳面さがのぞくが、

「昔、今村昌平さんの『うなぎ』という映画で出所者を演じたとき、90度手を振るという歩き方を習ったんです。今は刑務所でも、こういう歩き方はさせないそうですけど、三上は人生の大半を刑務所で過ごした男なので、あんな歩き方をするだろうと解釈しました」と、役所さん。

原作が書かれた頃とは社会の情勢その他が大きく変わった今の日本。13年ぶりに出所した三上にとっては何もかも隔世の感ありで、その真っすぐさゆえの世間とのズレは、ときに笑いを誘う。

「三上が暮らすのは、東京でもまだ人情が残っている下町ですけど、これが都心の閑静な住宅街だったら、彼自身の違和感や周囲の拒絶感はもっと強かったでしょう。六角精児さん演じるスーパーマーケットの店長みたいにお節介を焼く人もないでしょうし(笑)。でも、三上は最終的に人に救われるので、ああいう場所を選んだのだと、監督は話していました」

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