母のタンス、娘のセンス

女優・一色采子の「母のタンス、娘のセンス」番外編 長月徒然ダイアリー

2018.09.19

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一色采子のきもの連載

ようやく暑さを見送り、心地よい季節となりました。今回は、「芸術の秋」にふさわしい2つのイベントにきものでお出かけ。装いの場面に紐付けたコーディネートの工夫をどうぞご覧くださいませ。

絵画を邪魔しない無彩色の装いに小物で遊びを


一色采子のきもの連載小松美羽さんの作品「誰しも龍になる」の前で。


私が観光大使を務めている福島県二本松市を舞台に、来月から開催される「福島ビエンナーレ」。今年の目玉は、大山忠作美術館で催される国際的なアーティスト・小松美羽ちゃんの展覧会です。その視察と激励を兼ねて、この日は軽井沢ニューアートミュージアムで行われた美羽ちゃんのライブペイントへ。

私が「美羽ちゃん」などと呼ぶのには、もちろん理由があります。実は、彼女は女子美の後輩でもあり、2016年に開催したビエンナーレでも二本松市に作品を残してくれたというご縁が。それ以来、妙にシンパシーを感じて親しくさせていただいています。

一色采子のきもの連載ライブペイント後の美羽ちゃんそのものも、色彩にあふれたアート作品のよう。

実際の美羽ちゃんは華奢でシャイな人柄ですが、キャンバスに向かうと何かが憑依したように大胆でエネルギッシュな力に満ち溢れます。凄まじい集中力とダイナミックなパフォーマンスは観衆を圧倒。作品に魂を吹き込む、作者の高い精神性と確かな技術によって、キャンバスからはほとばしるようなエネルギーが放出されています。そんな作品を邪魔しないように、この日の装いはねずみ色の算盤玉(そろばんだま)の単衣に、白の博多帯という無彩色なコーディネートにしてみました。

一色采子のきもの連載白地に同色で独鈷柄を織りだした帯は、母が好んで締めていた一本。

色を控えたぶん、帯まわりに遊び心をプラス。漆黒地に金彩で龍を描いた大きなブローチを、帯留めの代わりに合わせました。この世には存在しない神獣を描く、美羽ちゃんの作品の世界のモチーフが唯一のアクセントとなったコーディネートです。
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