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きものの文様【菊(きく)】長寿を象徴する所以(ゆえん)は古代中国の伝説などから

2020.07.04

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きものの文様 きものに施された美しい「文様」。そこからは、季節の移ろいを敏感に取り入れてきた日本人の感性や、古来の社会のしきたりを読み解くことができます。夏の文様を中心に、通年楽しめるものや格の高い文様まで、きもの好きなら一度は見たことのある文様のいわれやコーディネート例を、短期集中連載で毎日お届けします。記事一覧はこちら

今日の文様34
菊(きく)


菊の花で菱形を構成した菊菱文様の袋帯。白と黒の大胆な組み合わせが、文様の個性を引き立てています。

奈良時代から平安時代にかけて、中国から伝えられた菊は、長寿を象徴する代表的な植物です。それは、中国の黄河(こうが)源流に有る菊の群生地から流れ出た水を飲んだ里人(さとびと)が延命を得たという「菊水」の伝説や、菊の露が滴(したた)った渓流の水を飲んで長命を得たという能楽の『菊慈童(きくじどう)』の伝説などによるものです。


実際に菊には抗菌作用があり、菊膾(なます)や菊酒などに用いられます。日本でも平安時代からは宮中で9月9日に重陽(ちょうよう)の節会(せちえ)が催され、菊酒を飲むことが定着。日本の文化に根づいた菊は、秋の花として愛でられるようになりました。重陽を過ぎて長く咲き残る菊を「残菊(ざんぎく)」と呼ぶのも、日本人独自の美意識です。

菊をさまざまに意匠化して使うようになったのは江戸時代からで、能装束などにも残されています。文様としては菊の花や葉を写実的にデザインしたもののほか、菱形(菱の文様の記事はこちら)や丸と組み合わせたものなど、多種多様です。菊は秋の花とされていますが、季節を問わず用いることができます。

菊菱(きくびし)



華やかな宴席に
花弁の重なりを見せる菊を菱形に切り取り、白地に配した大胆な訪問着。花心の金とコーディネートした袋帯を合わせて、9月から11月のパーティに。


菊の花を菱形に図案化したり、菱形の中に菊の花を詰めたものを総称して菊菱文といいます。ほかの菊の文様と同じ用に古くから用いられ、さまざまな文様と組み合わせて使われることもあります。小さな菊菱を生地一面に散らした江戸小紋のほか家紋にも見られます。

菊水(きくすい)




流水に菊の花を浮かべた文様で、流水の中に菊の花が半分隠れている意匠もあります。菊水文は菊の群生地から流れ出た水を飲むと寿命が伸びるという中国の故事にちなんで、古くから延命長寿のめでたい文様として知られてきました。

日本で文様として使われるようになったのは鎌倉時代以降で、家紋にも用いられ、当時の武将・楠木正成(くすのきまさしげ)の紋章でもあります。江戸時代の能装束や小袖にも多く見られ、「流れ菊」や「菊の遣(や)り水(みず)」などの風雅な名で呼ばれました。

菊尽くし(きくづくし)




江戸時代に菊の栽培が盛んになると、必然的に菊の種類が増えました。色や形はさまざまですが、それを文様化したり、組み合わせて構成したものが菊尽くし文です。

菊の丸(きくのまる)




菊の花や葉を用いて丸形に構成したもの、または円の中に菊を配した文様をいいます。古くから装束の唐衣(からぎぬ)などの文様として用いられてきました。現在はきものや帯に染めや織りで菊の丸が表現されています。一般的には菊だけでなく、の丸や桜の丸、梅の丸などと組み合わせて使われます。

【向く季節】
秋、通年


「#きものの文様」記事一覧はこちら

きものの文様

今回ご紹介した文様を含め、300以上もの文様を掲載。文様の歴史や意味が豊富な写真によってよくわかり、体系的に勉強することができます。きものを着る場合判断に迷う格と季節が表示され、こんな場所にお出かけできます、とのコーディネート例も紹介しています。見ているだけで楽しく役に立つ1冊。
書籍きものの文様
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