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きものの文様【舟(ふね)】島国になじみ深い船の文様は室町・桃山時代に登場

きものの文様 きものに施された美しい「文様」。そこからは、季節の移ろいを敏感に取り入れてきた日本人の感性や、古来の社会のしきたりを読み解くことができます。夏の文様を中心に、通年楽しめるものや格の高い文様まで、きもの好きなら一度は見たことのある文様のいわれやコーディネート例を、短期集中連載で毎日お届けします。記事一覧はこちら

今日の文様17
舟(ふね)

海に囲まれている日本は、漁などを通して古くから舟とかかわりと持ってきました。それだけに、舟の文様はなじみのあるもので、種類も多彩です。舟が工芸品や染織品の文様として登場するのは、室町・桃山時代以降です。

文様として描かれる舟は、帆掛け船、屋形船、南蛮船(なんばんせん)などが主流で、いずれも特徴のある形が印象的。これらの舟は単独で描かれるほか、波や葦(あし)などの水草、鳥などとともに用いられるものもあります。

なかには、葦の茂みから舳先(へさき)だけをのぞかせた風情のある文様も見られます。

南蛮船(なんばんせん)

室町時代末期から江戸時代にかけて、スペインやポルトガルからやってきた大きな船を文様化したものです。まだ見ぬ異国への憧れを込めて、ハイカラなモチーフとして描かれました。その後、オランダやイギリスからも船が渡航しましたが、欧州の船はすべて南蛮船と呼ぶようになったといいます。

当時の能装束や陣羽織(じんばおり)に南蛮船を描いたものが見られ、現在は訪問着や帯の文様に用いられます。

宝船(たからぶね)

米俵や宝珠(ほうじゅ)などの宝物を積んだ帆掛け船を文様化したものです。昔は、正月の2日の夜に、縁起のよい初夢を見るために、宝船の絵を枕の下に敷いて寝るまじないがありました。(宝尽くしの記事はこちら

当初は、帆掛け船に宝物を積んだ図柄でしたが、江戸時代になると七福神の乗ったものも描かれるようになりました。宝船の描かれた絵を売る「宝船売り」は大正の頃まで続いたといいます。

帆掛け船(ほかけぶね)

帆船(はんせん)ともいい、帆をかけた船を文様化したものです。庶民にとって身近な、生活のための柴や炭、野菜などを積んで小川を往来する小舟は、安らぎが感じられるようにのんびりと描かれます。

その一方で、遠距離や多量の荷物を運ぶ大型の帆船は、珍しい品物などを運んでくる夢の乗り物でした。こうした帆船は順風を受けて膨らんだ帆を強調して描かれ、未来への希望を感じさせます。

鵜飼篝火(うかいかがりび)

飼いならした鵜を使って、鮎などの川魚を捕っているところを文様化したもの。鵜飼篝火は現在も岐阜県の長良(ながら)川で、毎年5月11日から10月15日まで行われています。長良川鵜飼は1300年ほど前から行われているもので、もとは漁のためでしたが、現在は伝統を伝える観光となっています。

写真の文様は夏用の麻地の帯に、藍で染められたものです。

花舟(はなふね)

小舟に花をのせて文様化したものです。四季の美しい草花を積んだ舟が、小川を流れてゆく風雅な意匠です。写真は訪問着ですが、花舟の向きに変化をもたせ、躍動感のある仕上がりになっています。

【向く季節】
通年、夏、正月

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きものの文様

今回ご紹介した文様を含め、300以上もの文様を掲載。文様の歴史や意味が豊富な写真によってよくわかり、体系的に勉強することができます。きものを着る場合判断に迷う格と季節が表示され、こんな場所にお出かけできます、とのコーディネート例も紹介しています。見ているだけで楽しく役に立つ1冊。

格と季節がひと目でわかる――きものの文様

監修者/藤井健三

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