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きものの文様【宝尽くし(たからづくし)】宝尽くしの“宝”、いくつ言えますか?

きものの文様 きものに施された美しい「文様」。そこからは、季節の移ろいを敏感に取り入れてきた日本人の感性や、古来の社会のしきたりを読み解くことができます。夏の文様を中心に、通年楽しめるものや格の高い文様まで、きもの好きなら一度は見たことのある文様のいわれやコーディネート例を、短期集中連載で毎日お届けします。記事一覧はこちら

今日の文様11
宝尽くし(たからづくし)

「●●尽くし」という表現は、文様の名前によく見られますが、同じテーマのモチーフを集めて文様として表現したものです。宝尽くしのほか、楽器尽くし(記事はこちら)、貝尽くしなどもあります。

宝尽くしとは、いろいろな宝物を並べた縁起のよい吉祥文様です。もともとは中国の文様で、中国の吉祥思想のひとつ「八宝(はっぽう)」や「雑八宝(ざつはっぽう)」に由来します。それが室町時代に日本に伝わり、日本風にアレンジされて宝尽くし文様となりました。

宝尽くし文(たからづくしもん)

中国の宝尽くしのモチーフは、仏教経典に基づいた宗教上の吉祥文様です。これらをもとに日本の宝尽くし文様が生まれました。

打出(うちで)の小槌(こづち)や、隠れ蓑(みの)、隠れ笠(がさ)、金嚢(きんのう)など、時代や地方によってこれらのモチーフは異なりますが、いずれも吉祥文様です。

江戸時代から用いられ、現在もきものや帯に数多く使われています。モチーフの使い方はさまざまで、印象的なものを散らしたり、宝尽くしに松竹梅を組み合わせたものもよく見られます。


新年会や初釜に
美しいぼかしに宝尽くしが描かれた付下げと古典文様の袋帯の組み合わせ。宝尽くし文様はいつ着てもよいものですが、お正月に着るとよりおめでたい印象に。

【代表的な宝物】

宝尽くし文様には、縁起のよいさまざまな宝物が用いられます。その中の代表的なものを紹介します。

打出の小槌(うちでのこづち)


一寸法師や七福神の大黒天が持っている打出の小槌は、振れば背が伸びたり欲しいものが手に入るという縁起もの。ものを打つことから「敵を打つ」に通じて吉祥文に。

丁字(ちょうじ)


スパイスのクローブのことで、平安時代に渡来しました。薬用、香料、染料、丁字油などになり、希少価値から宝尽くしのひとつになりました。

分銅(ふんどう)


秤(はかり)で物の重さを量るときに用いるおもりを分銅といいます。鉄や真鍮(しんちゅう)で作られており、四角形などもありますが、両替の金銀に価して、また円形の左右がくびれている形が美しいところから文様に使われました。

金嚢(きんのう)・巾着(きんちゃく)


お守りやお金、香料などを入れる袋のことで、金嚢とも巾着とも呼びます。緞子(どんす)や錦などの美しい布で作られ、口を紐で結びます。巾着文は単独できものや帯の文様にも用いられます。

宝巻(ほうかん)・巻軸(まきじく)


宝巻はありがたいお経が書かれたもの、巻軸は秘伝などを記したもの。この2つは筒守(つつもり。次項参照)で表現されることもあります。

筒守(つつもり)


ありがたいお経などが書かれた宝巻や秘伝が書かれた巻軸などを入れる筒状のもので、宝尽くし文様では×(バツ)型に表現されています。

隠れ蓑(かくれみの)


蓑は藁(わら)や茅(かや)などで作られた寒さや雨などから身を守るもの。隠れ蓑という言葉は、着ると他人から姿が見えなくなることから、この名がつきました。天狗が持っていると伝えられます。

隠れ笠(かくれがさ)


隠れ蓑と同じような素材で作られた笠で、やはりかぶると他人から姿が見えなくなるので、こう呼ばれます。

方勝(ほうしょう)


中国の「雑八宝」のひとつで、菱形の首飾りを意味します。その菱形を赤や桃色の紐で結んだものです。

宝珠(ほうじゅ)


宝の珠(たま)のことで、もとは密教法具のひとつ。丸くて先がとがっており、その先端と両側から火焔が燃え上がっているように描かれます。金銀財宝など臨むものを出すことができるといわれる不思議な珠。

【向く季節】
通年、正月

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きものの文様

今回ご紹介した文様を含め、300以上もの文様を掲載。文様の歴史や意味が豊富な写真によってよくわかり、体系的に勉強することができます。きものを着る場合判断に迷う格と季節が表示され、こんな場所にお出かけできます、とのコーディネート例も紹介しています。見ているだけで楽しく役に立つ1冊。

格と季節がひと目でわかる――きものの文様

監修者/藤井健三

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