きものダイアリー

「出会うべくして出会ったきもの」と村治佳織さん。内面からの美しさを引き出す紫の力

2026.06.16

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志村洋子(染織家)×村治佳織(ギタリスト)響き合う“奇跡の紫”を求めて(後編)ギタリストの村治佳織さんに、紫のきものを着てほしい──。一人の紳士の願いから、世界に一つだけのきものが誕生しました。紬織の人間国宝・志村ふくみさんの娘である染織家の志村洋子さんが、植物のいのちをいただき、染め、織り上げる……。尊い紫の物語をお届けします。・前回の記事はこちら→

「近江の美しい光景をきものに見ました」──村治佳織さん

「このきものの色に、近江で見た朝焼け、琵琶湖の水辺、スペインの葡萄畑など、さまざまな自然の光景を感じました」という村治さん。草木染めならではの優しい表情と力強い生命力が共存する一枚が、村治さんの内面からる美しさを引き出します。

「このきものの色に、近江で見た朝焼け、琵琶湖の水辺、スペインの葡萄畑など、さまざまな自然の光景を感じました」という村治さん。草木染めならではの優しい表情と力強い生命力が共存する一枚が、村治さんの内面から迸る美しさを引き出します。

響き合う紫に魅了されて

「私は村治さんの“顔つき”が好きなのです。彼女の顔には、若い頃からずっと挑戦を続けてきた、彼女の生きざまというものが如実に表れている。だから長年応援しているのですが、洋子さんのご本を拝見して、ああ、村治さんには紫のきものだ、彼女のこれからの人生には、きものを着てほしいと思いました」

そう話す大島さんは、「挑戦する魂が彼女の顔を作っている。顔は志」と続けます。20代、30代、そして40代の顔と、それぞれの年代で村治さんの顔つきがどんどん変わってきていることを感じるそうです。

村治さんが自分で染めた紫の糸とともに。自然のいのちが生み出す色の力に思いを馳せて。

村治さんが自分で染めた紫の糸とともに。自然のいのちが生み出す色の力に思いを馳せて。

京都で車の販売会社を経営している大島さんは、京都の街中を愛車で走っているとき、世界はなんて美しいものに溢れているんだろうと感じるのだそう。BGMはもちろん村治さんの音楽。12歳の時すでに、ギタリストになると作文にしたためていたという村治さんの20歳の頃のインタビューを観て感銘を受けた大島さんにとって、村治さんは、自分ももっと頑張ろうという生きる希望を与えてくれる存在なのだそう。


近江八幡で育ち、京都で染織活動に邁進する洋子さんはまた、村治さんの表現力を絶賛します。「『鏡』の撮影で村治さんに作品を着てもらったとき、きものの魅力をこれほどまでに引き出せる方なのだと感動しました。本を見て、大島さんが村治さんにきものをと思った気持ちがよくわかります」。

圧倒的な存在感を放つ一枚が完成。

圧倒的な存在感を放つ一枚が完成。

「私にとって紫は、藍とともに特別な色。藍建ても難しいですが、紫も本当に難しい。紫は赤にも青にも転ぶでしょう。湯の温度や灰の濃度、染める回数などに決まったレシピはなく、繊細で毎回奥深い。意欲が搔き立てられる色なのです」

通常は差し色としてアクセント的に使うことが多い紫を、今回は主役の色としたことについて、洋子さんは、永源寺の紫根があるからこそできる、といいます。「永源寺の紫には品格があり、それは村治さんによく映える」と洋子さん。

村治さんは紫のきものを着て「テレパシーのようなものを感じた」そうです。「私の名前は、佳き人生の絵巻物を丹念に織り上げていくようにという思いを込めて、父がつけてくれました。自分のために織られたきものに袖を通したとき、この名前で生きてきた意味を感じるとともに、出会うべくして出会ったのだと、素晴らしいご縁に感謝しています」。

八掛にはギタリストの村治さんらしく、音符をデザイン。見えないところにも作り手の心が込められています。

八掛にはギタリストの村治さんらしく、音符をデザイン。見えないところにも作り手の心が込められています。

村治さんの人生が、きものとともにますます輝くよう──そんな願いで作られたかけがえのない一枚が、彼女の生み出す音色に新たなエネルギーを与え、多くの人の心を潤す……。紫という色の持つ力は、かくも響き合い、多くの人々を魅了してやまないのです。

※2026年で開館30周年を迎えるアサヒグループ大山崎山荘美術館では、現在「開館30周年記念 没後100年 クロード・モネ展」(~2027年4月11日)、「開館30周年記念 山本爲三郎・河井寬次郎没後60年記念 共鳴 河井寬次郎×濱田庄司―山本爲三郎コレクションより(~9月6日)を開催中です。https://www.30th.asahigroup-oyamazaki.com/

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この記事の掲載号

『家庭画報』2026年06月号

家庭画報 2026年06月号

撮影/森山雅智 ヘア&メイク/久保木 純〈PARADISE WEST〉 園山絵里〈mii.to hair make〉 着付け/山﨑真紀〈やまさき組〉 撮影協力/アサヒグループ大山崎山荘美術館 セフティ フレッド 都機工房

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