
年の瀬も近づいた12月。村治さんは京都の都機(つき)工房を訪ねます。
「私の本で村治さんが着た紫のきものは、“夜想曲(ノクターン)”という作品。甘美なメロディがいったいどれだけの人の心を震わせてきたことか。村治さんによくお似合いの一枚でした」と洋子さん。
洋子さんが静かに機を織る手もとを見つめながら、「織り上がるのが楽しみ」と村治さんも待ちきれない様子です。
2026年2月、いよいよ完成した反物を仕立てる日が来ました。鏡の前で当ててみて、顔映りを確認する村治さん。紫のきものが放つえもいわれぬオーラに、高揚した表情を見せます。
そして3月──。仕立て上がった一枚は、このきものが生まれるきっかけとなった本の撮影地、アサヒグループ大山崎山荘美術館で撮影することに。 そこは今年、開館30周年というアニバーサリーイヤーでもありました。大島さんの愛車のポルシェとともに、広大な庭園に立つきもの姿の村治さんは、「すべてが“今”というタイミング。ご縁を感じるとともに、きものから新たなエネルギーをいただいている気がします」。
東近江で育まれた希少な植物が、そのいのちを糸へ移す。いのちを宿した経糸と緯糸が織り成すきものが、次なる生きる力を与える……。紫の物語は、連綿と続くいのちの希望の物語でもあります。この記事の掲載号
撮影/森山雅智 ヘア&メイク/久保木 純〈PARADISE WEST〉 園山絵里〈mii.to hair make〉 着付け/山﨑真紀〈やまさき組〉 撮影協力/アサヒグループ大山崎山荘美術館 セフティ フレッド 都機工房