デジタルアートに昇華された紋
伝統的な墨と筆で家紋を描く技術を継承しながら、「京源」がターニングポイントを迎えたのは、2010年のこと。ある企業から家紋をあしらったロゴデザインをデータで納品してほしいという依頼を受けたことがその発端に。
仕事の大半がデジタルワークになった今でも、承龍さんは手描きの作品にも挑み続けている。写真は、茄子の江戸小紋の型紙を、越前和紙の重要無形文化財保持者である岩野市兵衛さんが漉いた紙に、鷹と富士山を手描きでデザインした“一富士二鷹三茄子”の作品。
承龍さんがデザインし、それを耀鳳さんが独学でソフトを学んでロゴを制作した際に、「これは新しいことができる」という手応えを得たといいます。その後、本格的にパソコンを導入し、紋デザインの道を模索し続けるなかで辿り着いた一つが、“紋曼荼羅(もんまんだら)”という新境地です。
どのように描くのかによって“紋曼荼羅”の線の軌跡が全く異なり、そこに絵師のセンスが表れる。画面には、たてがみを成す円の軌跡が美しい「座り馬」の家紋が。
「パソコン上で、紋ができるまでのプロセスを俯瞰してみたら、無数の円と直線から紋が立体的に浮かび上がる構図が曼荼羅のようだと感じ、アート作品にするアイディアが生まれました」(承龍さん)。
隣り合ってパソコンに向かう父・承龍さん(左)と、息子の耀鳳さん(右)。壁面を飾るのは、太鼓の鋲(びょう)で家紋を表現した工房の代表作「Mon×Studs」。ホテルや商業施設の内装にも採用された。
二次元の紋の世界に神秘的な奥行きを生み出す父と息子の様子に、「息子さんがお父様を尊敬し、一緒に令和の紋の世界を開拓しているのが素敵ですね」と、藤間さんは伝統と革新の側面に想いを寄せました。
京源住所:東京都台東区
https://www.kyogen-kamon.com/「日本古来の紋は、今後もますます進化していくのですね」──藤間さん

完成した三ツ銀杏の上絵の作品とともに、波戸場承龍さん(右)と耀鳳さん(左)との記念のワンショット。一見すると無地のような承龍さんのきものの地紋は霰柄、耀鳳さんは鱗柄。ここにも“円と線”の美学が秘められています。