きものダイアリー

松本幸四郎夫人・藤間園子さんとめぐる「江戸の手仕事」──高麗屋の浴衣を手がける染め工場へ

2025.06.19

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浴衣地はその年のご進物にも

オリジナルの浴衣地は、一門を物語る大切な品です。注文を受けるのは、高麗屋好みを熟知した東京・人形町の呉服専門店「錦や」。

浴衣地は一門の役者やお弟子さんが着用するほか、ご贔屓筋やお世話になった方への進物としても使います。左・四つ花菱をたっぷりと連ねた、白が際立つ一枚。右・破れ格子に四つ花菱を重ねて飛び柄に。●錦や TEL:03(3666)5361

浴衣地は一門の役者やお弟子さんが着用するほか、ご贔屓筋やお世話になった方への進物としても使います。左・四つ花菱をたっぷりと連ねた、白が際立つ一枚。右・破れ格子に四つ花菱を重ねて飛び柄に。●錦や TEL:03(3666)5361

高麗屋の紋“四つ花菱”や“高麗格子”、日本舞踊・松本流の“松”を骨子として、江戸好みのきりりとした意匠を提案。数パターンの中から、松本白鸚夫人の紀子さんが中心となって“その年”の図案を決めます。完成した図案は型紙職人のもとを経て、染めの工場へ送られ、浴衣として染め上げられます。

田川の水が支えてきた「宮染(みやぞめ)」を現代に受け継ぐ

江戸時代の末期、栃木県宇都宮に流れる田川の水の恵みを一助に、染物産業が栄えます。

この地で染められる藍染めを中心とした木綿染めは、地名に由来して「宮染」と呼ばれ、最盛期には30軒もの染工場が軒を連ねました。現在は3軒を残すだけとなっていますが、それぞれが技術の異なる染めを手がけています。

大量の水を要する染物産業にとって、川の近くに工場を構えることは必要不可欠な条件でした。今もその水を工場に引き込み、「宮染」のさまざまな工程で活用します。

大量の水を要する染物産業にとって、川の近くに工場を構えることは必要不可欠な条件でした。今もその水を工場に引き込み、「宮染」のさまざまな工程で活用します。

中川染工場が専門とするのは、明治期に発案された「注染」と呼ばれる染色技法。その一番の特長は、片面だけでなく裏までしっかり染まっている点です。染料が下まで抜けるため、生地目が詰まらないことから吸水性や風通しに優れ、着心地も爽やか。にじみや揺らぎなど、独特の風合いが生まれることも魅力です。


注染の工程は、複数の職人が分業して進めます。どの作業でも機械や道具を使いますが、最終的に頼るのは、職人たちの丁寧かつ正確な手仕事と、経験に裏打ちされた勘です。

「日々目にしている浴衣が、こうして丹念に作られているのを拝見して感動しました。江戸から続くものづくりと歌舞伎は切っても切れないご縁で結ばれていると思います。このご縁を大切に守り、未来へ伝えていかないといけませんね」(藤間さん)。

注染の道のり

1.生地の準備

専用の回転機械を使い、生地のしわを平らに伸ばしながら、きれいな丸巻きに整えます。一見すると簡単なようで、しわが寄らないように巻く作業は技術が必要。型を均一に置くための欠かせない工程です。

2.型置き

糊付けする「板場」では、その日の気温や柄の細かさに応じて、職人が糊の硬さを毎日調整。最も重要なのは、生地を真っ直ぐに平らに置くこと。さらに、反物を折り返す際に柄が繫がるように置くのは熟練の技術を要します。

3.染め


染め場は「紺屋(こうや)」と呼ばれています。写真は富士山、桜、小鳥を描いた手ぬぐいを染めているところ。上・3種類のピンクを注ぎ込んで繊細なグラデーションに。下・小鳥の柄に沿って防染した壁の中に2色の染料を注ぎます。

4.洗い

染め終わった反物を水洗いし、防染糊を落とします。この工程では水を掛け流しにするため、田川から引き込んだ水をおおいに活用。染めの際に何重にも折り束ねられていた反物を、人の手によって水の中で丹念にほどきます。

中川染工場
住所:栃木県宇都宮市錦1-562 
TEL:028(621)0571

「シンプルだからこそ、ごまかしが利かない。職人の気概を感じました」──藤間さん

「手仕事の技とともに、この美しい光景も残したいものですね」と、昔ながらの櫓で反物を天日干しする様子を感慨深く見つめる藤間さん。お召しになった夏衣は、濃淡の染め疋田を市松取りに染めた小紋に、屋形船から花火を愛でる夏の風物詩を描いた染め帯。「錦や」で誂えたひと揃いが、目に涼やかさを映します。

「手仕事の技とともに、この美しい光景も残したいものですね」と、昔ながらの櫓で反物を天日干しする様子を感慨深く見つめる藤間さん。お召しになった夏衣は、濃淡の染め疋田を市松取りに染めた小紋に、屋形船から花火を愛でる夏の風物詩を描いた染め帯。「錦や」で誂えたひと揃いが、目に涼やかさを映します。

この記事の掲載号

『家庭画報』2025年07月号

家庭画報 2025年07月号

撮影/鍋島徳恭 着付け/伊藤和子 ヘア&メイク/森野友香子〈Perle〉 取材・文/樺澤貴子

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