高麗屋の紋“四つ花菱”や“高麗格子”、日本舞踊・松本流の“松”を骨子として、江戸好みのきりりとした意匠を提案。数パターンの中から、松本白鸚夫人の紀子さんが中心となって“その年”の図案を決めます。完成した図案は型紙職人のもとを経て、染めの工場へ送られ、浴衣として染め上げられます。
江戸時代の末期、栃木県宇都宮に流れる田川の水の恵みを一助に、染物産業が栄えます。
この地で染められる藍染めを中心とした木綿染めは、地名に由来して「宮染」と呼ばれ、最盛期には30軒もの染工場が軒を連ねました。現在は3軒を残すだけとなっていますが、それぞれが技術の異なる染めを手がけています。
中川染工場が専門とするのは、明治期に発案された「注染」と呼ばれる染色技法。その一番の特長は、片面だけでなく裏までしっかり染まっている点です。染料が下まで抜けるため、生地目が詰まらないことから吸水性や風通しに優れ、着心地も爽やか。にじみや揺らぎなど、独特の風合いが生まれることも魅力です。
専用の回転機械を使い、生地のしわを平らに伸ばしながら、きれいな丸巻きに整えます。一見すると簡単なようで、しわが寄らないように巻く作業は技術が必要。型を均一に置くための欠かせない工程です。
糊付けする「板場」では、その日の気温や柄の細かさに応じて、職人が糊の硬さを毎日調整。最も重要なのは、生地を真っ直ぐに平らに置くこと。さらに、反物を折り返す際に柄が繫がるように置くのは熟練の技術を要します。

染め場は「紺屋(こうや)」と呼ばれています。写真は富士山、桜、小鳥を描いた手ぬぐいを染めているところ。上・3種類のピンクを注ぎ込んで繊細なグラデーションに。下・小鳥の柄に沿って防染した壁の中に2色の染料を注ぎます。
染め終わった反物を水洗いし、防染糊を落とします。この工程では水を掛け流しにするため、田川から引き込んだ水をおおいに活用。染めの際に何重にも折り束ねられていた反物を、人の手によって水の中で丹念にほどきます。
中川染工場
住所:栃木県宇都宮市錦1-562
TEL:028(621)0571

この記事の掲載号
撮影/鍋島徳恭 着付け/伊藤和子 ヘア&メイク/森野友香子〈Perle〉 取材・文/樺澤貴子