きものダイアリー

サンタクロースの面影を探して 内田也哉子の衣(きぬ)だより

母と娘の新たなる邂逅 内田也哉子の「衣(きぬ)だより」第5回 クリスマスの朝──。胸を高鳴らせてプレゼントに駆け寄る子どもにとっては特別な瞬間です。也哉子さんにとっての“サンタクロース”だった希林さんは、彼女にどんなサプライズを運んでくれたのでしょう。そして、自らが“サンタクロース”となった今、家族と過ごすクリスマスの情景とは……。優しさに満ちたエッセイとともに、寒さの折に心を照らすような装いをご覧ください。前回の記事はこちら>>

大胆にしてクラシック 大人の赤を纏い、夜会へきものの解説は、記事の最後にある「フォトギャラリー」をご覧ください。

内田也哉子さん(うちだ・ややこ)
1976年、東京生まれ。文筆業。夫で俳優の本木雅弘氏とともに3児を育てる。著書に『会見記』『BROOCH』(ともにリトルモア)、『9月1日 母からのバトン』(ポプラ社)、『新装版 ペーパームービー』(朝日出版社)など多数。また、映画『流浪の月』にも出演。Eテレ『no art, no life』(日曜8時55分〜)にて語りを担当。

サンタクロースの面影を探して ── 内田也哉子

「さんたさんへ、
ぴんくの まいめろでぃの じてんしゃをください。
ややこ」

クリスマスが近づくと、小学生になった私はサンタクロースへ手紙を書いた。 普段から、キャラクターものは一度たりとも買ってもらえなかったので、ここぞとばかりに「サンタなら聞いてくれるはず」と想いの丈を書き、クリスマスの朝を固唾を呑んで迎えた。 パジャマのままそっと居間へ行き、あたりを見回すと、どこにもプレゼントは見当たらない。ふと、玄関に目をやると、扉が半開きに! 胸の高鳴りを抑えて近寄ると、そこには装飾の一切ない、真っ黒な自転車が置かれていた。 サイズ的には間違いなく子ども用だ。 しかし、よく目を凝らすと、ハンドルにはあの量販店のスティッカーが……。

「あの時、ややこは『お母ちゃん、サンタクロースもイトーヨーカドーに行くんだね』って私に言ったの!」と母がゲラゲラ笑うのが、後のこの季節のお決まりとなった。

いつも自分が欲しいものを手紙に書いても、まったく異なる地味な日用品が届くので、ある冬、

「サンタさんって、本当にいるのかな?」

と母にまっすぐ問うてみた。すると、

「本当に信じている子にしか、サンタクロースは来ないんだよ」

と返され、 翌年から、私の元へクリスマスプレゼントが届く事はなくなった。

以来、私の中でクリスマスは、単にプレゼントがもらえなくなるという物理的なことよりも、「なにか目に見えないものを信じることや、その純な心を永遠に失ってしまう儚さ」の象徴となった。

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