茶箱あそび

海外の旅の思い出を茶箱に。ふくいひろこ「京都発 茶箱あそび、つれづれ」6月

〔連載〕京都発 茶箱あそび、つれづれ 京都在住のふくいひろこさんが、ひと組の茶箱を通して、ときには京都の歳時や工芸を味わい、ときには茶を点てる場所を変えて、日常に抹茶を楽しむ具体例をお伝えします。一覧はこちら>>

6月
コーヒーにする? 抹茶にする?

抹茶を飲む時、どんなお菓子を食べてますか。
茶席では和の生菓子や干菓子が出てくることが多いのですが、わたしのふだんの生活では和洋かかわらずいろいろな菓子を抹茶と一緒にいただいています。

抹茶に関わらず、コーヒーと和三盆、日本酒とあんこのマッチングもいける、というのはコーヒー好きやお酒好きなら、実践済みという方も多いかもしれません。

固定観念にとらわれなければ、意外にも相性がいいものを見つかるのは人生のささやかな幸せごと。抹茶にも、和菓子はもちろん、洋菓子に、果物、それからナッツ類や大徳寺納豆のような塩味のものまで、その時々に合わせます。

今月の茶箱は「ドイツ組」。見立ての道具をぎっしりと詰め込んだひと組。

菓子だけではありません。茶箱に使える道具もまたさまざまなところで見つかります。今回は「旅の思い出シリーズ」(と、わたしが勝手に名づけている道具類)のひと組を。

旅先で出会う工芸品や骨董などを買い求める習慣は、すでに中学生の頃からで、連れて帰るのは学生時代は手塩皿や箸置きなどの可愛いものでした。成人し茶箱を組むようになってからは少々エスカレートしています。

ここでは3年前に10日ほど滞在していたドイツのケルンで見つけたものを中心に、見立てで組んだものを紹介します。

ケルンの街で出会った小物たち。

ケルンには縁があって開催することになった自身の茶箱展のために滞在していたのですが、時間を見つけては街を歩いていました。地元の方に教わったアンティークショップや、街角で見つけた現代工芸のギャラリー、お茶の専門店など、どこへ行っても考えているのは茶箱に使う道具のこと。

たとえば上写真の3点。左からアンティークで銀の縁がついたグラス、中央は現代ものの小壺、右はやはりアンティークショップにあったヘレンド製の小さな花瓶です。

なぜか家にあったコルクがぴったりと合って、もうこの器の蓋にしか見えない。

グラスの用途は不明ですが、目にした途端、箱の中でどんなふうに使うかを想像していました。「菓子器にも茶器にも茶巾筒にもなるな」。今回は茶器として使用していますが、小壺は菓子入れに、花瓶は茶巾筒に変身しました。

紅茶やハーブティーの専門店で、ブルーの更紗模様の入ったカフェオレボウルを見つけ、茶碗用に2つ購入。銀製の小皿もアンティークショップで見つけた掘り出し物。菓子皿や茶巾置きに使います。

アンティークの家具が配されたセットの中で、ドイツ組の茶箱を広げる。

ところで、今月は知り合いのカメラマンの方の貸しスタジオのセットをお借りしています。

主宰する水円舎の茶箱のプロモーションビデオなどを撮影していただいている山平舎の小林正和さん。ちょっと屋号が似ていて兄妹みたいですが、いろいろとお世話になっています。

彼のスタジオで打合わせや撮影をすると、豆を挽き、サイフォンで香り豊かなコーヒーを淹れてくれることもしばしば。わたしも茶箱でお茶を振る舞ったりするので、この頃は抹茶の銘柄にも詳しくなっているご様子です。

パティスリー クリアンの洋菓子、抹茶にもコーヒーにも合いました。

小林さんのスタジオで撮影するなら、一緒に美味しいコーヒーをごちそうになりたいと欲張りなリクエストをし、抹茶にもコーヒーにも合う、気に入りの洋菓子を持っていくことに。

これは奈良の五條市にあるパティスリー クリアンのもの。地元の素材を中心に使った丁寧なケーキやパフェは一度いただいたら忘れられない美味しさで、フランスに旅したような店内の雰囲気も素敵な評判の店です。京都市からは少し遠いので度々行くわけにもいかず、時折焼き菓子などを送ってもらっています。

向かい合わせでそれぞれの「お点前」を。

今回の茶箱には、抹茶と一緒にコーヒーを楽しむための茶碗を少し追加しました。加えたのは、ケルン滞在後に立ち寄ったパリのガラクタ市で見つけた白磁のボウル。茶碗4つが収まるだけの容量があり、持ち運べる茶箱はないかと部屋中を探していると、まだ使ったことがなかったバスケットが出てきました。

いやはやこのバスケット、実は友人でもあるパティスリー クリアンのオーナーさんからいただいたのものなのです。以前、お店を訪れて苺パフェに邁進しているわたしに「ひろこさん、これ茶箱に使えるかしら」と言って見せてくださったもの。このようにグルグルとした因縁の中で必要なものが揃い、茶箱ができ上がってゆくのはいつも不思議です。

コーヒーと抹茶、一緒にいただいても美味しいもの。

旅の思い出が詰まったバスケットを持ち込み、テーブルの上で道具を広げます。向かい側で小林さんにコーヒーを淹れてもらいました。カフェオレボウルたちは抹茶にもコーヒーにも合いそう。

撮影が一段落した時点で、オフィスにいた山平舎のスタッフさんたちにも声をかけて一旦休憩。「さあ、抹茶がいい? それともコーヒー?」、もちろん両方飲むのもあり。気取らない茶箱あそびならでは、自由なお茶の時間です。

パティスリー クリアン
URL:http://www.patisserie-client.jp

山平舎
URL:https://www.yamaheisya-studio.com

ふくいひろこ

京都市生まれ。茶道周辺や京都関連本の編集者をつとめながら、自身の趣味として茶箱であそぶこと20余年。茶道具のみならず見立ての道具をふんだんに使い、日常で楽しむお茶を提案。道具を集めるのに飽き足らず、理想の茶箱道具を知り合いの作家や職人にオーダーするうちに、オリジナル茶箱の作品群が生まれ、時折展示会なども行っている。
●水円舎ホームページ https://suiensha.com

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文・写真/ふくいひろこ

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