観劇日記

中村米吉さんが語る、歌舞伎座『秀山祭九月大歌舞伎』

歌舞伎新世代がナビする「きもので観劇」其の九

中村米吉
「僕にとって秀山祭のある9月は特別な月。培ってきた基本が問われる、大切な公演です」

七色の声を使い分けての美しい舞台姿を観ていると、“ぼんじゃり(柔和でおっとりしているさま、ふくよかで美しいさま)”や、“おきゃん(活発でやや軽はずみな若い女性、おてんば)”など、今はあまり耳にすることがなくなった古き良き時代の女性への形容詞が思い浮かぶ中村米吉さん。9月は『秀山祭九月大歌舞伎』で舞踊劇『鬼揃紅葉狩』の侍女ぬるでと『天衣紛上野初花 河内山』の腰元浪路をつとめます。

米吉「『鬼揃紅葉狩』は舞踊劇。秀山祭では二度目の上演です。美しい姫君が実は鬼女だったというお話で、幸四郎さん演じる更科姫の侍女のお役の僕も、後半は鬼女になり、隈取をします。女方で隈を取るお役って、なかなかないので、人生初の隈取です。やり慣れないことですし、早替りで時間との勝負ですので、楽しみな反面、少し不安もあります」。

一方の『河内山』は、『天衣紛上野初花』の一幕。殿様が側室にするため監禁してしまった腰元の浪路を救い出すためにお数奇屋坊主の河内山宗俊が上野寛永寺からの使僧と身分を偽り、乗り込んで活躍する、河竹黙阿弥作の人気狂言です。

米吉「平成24年、19歳の時に初役でつとめました。その時は、当時染五郎でいらした今の幸四郎のお兄さんの河内山宗俊をはじめ若い座組だったのですが、その後、吉右衛門のおじさんの河内山宗俊でも一度出演させていただいています。今回は3度目ですので、少しは成長しているところをお見せしなければ、と、緊張しますね」。

物語の発端は、河内山宗俊が浪路の実家である質店を訪れ、監禁された浪路の奪回を請け負うこと。

米吉「腰元浪路のお役は、口説きや振り事があるわけではなく、座敷に逃げて来たら後はほとんどじっと俯いているだけなのですけれど、だからこそ、普段から蓄積した基本の部分が問われるのだと思います。大店のお嬢さんが行儀見習いでお大名のお屋敷に上がっているわけですから、お姫様ではない。でも、ただの町娘でもない。高貴な人に仕える腰元らしく、出しゃばらず行儀よく慎ましく……でも、浪路のために色々なことが起きて物語が展開しているのだということも意識して演じたいと思います」。

腰元の役といえば以前、『松浦の太鼓』でも大高源吾の妹、お縫を演じました。

米吉「実はあの時も、吉右衛門のおじさんに“腰元なんだからね”とご注意を受けたんです。襖の開け閉め一つとっても腰元っぽくなかったということなのでしょう。今回は歌舞伎座での秀山祭で、吉右衛門のおじさんの河内山での浪路ですので、初心に戻った気持ちで、気を引き締めてつとめさせていただきます。

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