女優・一色采子の「母のタンス、娘のセンス」〜霜月

「いずれ采子が着るんだから、贅沢じゃないわよね」……これが、母がきものを新調する時の口癖でした。そんなふうに、エクスキューズしながら誂えた結城紬や芭蕉布、宮古上布など、所謂贅沢なきものが何棹かの箪笥におさめられています。そんな箪笥を引っ掻きまわしながら、今の私には「ちょっと地味かな」と思える母のきものや帯に、娘時代の「ちょっと派手」になってしまったアイテムを合わせた新鮮な組み合わせから始まった母の箪笥の活用術。今月から一年間に渡って、私の「母のタンス、娘のセンス」をご紹介致します。

●今月の引き出し●

「黒地の染め帯」は母の「地味きもの」を今様に着こなす万能アイテム

刻々と季節が深まりゆく11月。暮れゆく秋の趣をきもので纏いたいと、母の箪笥をのぞき見ると、落ち着いた秋色の常着を何枚も発見。毎日をきもので暮らした母。お出かけの際はきれいな色の晴れ着を纏いましたが、在宅時は地味なきものを品良く着こなしていました。

母の装いには憧れますが、今の私にはちょっと古臭く見えてしまいそう……そこで、自分の箪笥の中からあれこれパズルを試みるうちに、「黒地の帯を合わせると、どんなにくすんで見えるきものでも、ハズレ無しでスタイリッシュに見える!」というセオリーを発見! 織り帯ならばキリリと格調を醸し、染め帯ならばしっとりとした艶めきが生まれます。

 

遊び心ある生き物尽くしの柄で大人可愛い印象に

ほっこりとした奥行きを感じさせる海松色に変わり縞の結城紬は、今はなき「銀座つむぎ屋」で誂えた母の面影が宿る一枚。「結城は軽くて、水を通すほどしなやかになった着やすくなる」と、無地感覚の結城紬を普段着にしていた母。こんな紬にすっきりと洒落た染め帯を締めて、いつも「ちんまり」と座敷に座っていました。

私の箪笥から取り出したのは、約20年前に母と一緒に選んだもので、黒地に動物や昆虫、魚などを表情豊かに描いた「生き物尽くし」のユーモア溢れる帯です。「こんなに楽しい帯があるなんて!」と一目惚れする私を見て、母も一緒に喜んでいました。帯を購入した当時は、明るい刈安色の結城紬に合わせて楽しんでいましたが、年齢を重ねるに従って次第に出番を失ってしまいました。

その可愛すぎる生き物尽くしの帯に、件の海松色の母の地味な結城紬を合わせて見ると、これが見事にぴったり。大人の可愛いらしさを引き出すコーディネートになりました。賑やかな生き物たちの姿をオーケストラに見立てて、この日はお友達と待ち合わせてジャズのコンサートへ。

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