〔特集〕時代が求めるラグジュアリーな暮らし 豪邸マンション新潮流 集合住宅でいかに豊かに暮らすか。壁や間取りにとらわれず、住み手の理想に合わせて再構築するスケルトンリフォームが広がっています。時代を代表する建築家による3事例から、今、求められるラグジュアリーの形をご紹介します。
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眺望を楽しむ高層ライフ
吹き抜けを生かすメゾネットマンション
──S邸[東京]
高層フロアに広がる、アートの舞台
吹き抜けを中心に、上下階が一つの景色として連なるメゾネットタイプのS邸は、アートとともに暮らすための大胆で洗練された住まい。黒い石柱や大理石の彫刻、煌めくシャンデリアなどが重なり合い、空間そのものが舞台のように構成されている。大きな窓の向こうに広がる都会の眺めもまたこの家のインテリアの一部。素材の質感や光の反射、色の抑揚が呼応し合いながら、日常の時間を豊かに包み込む。
アートと建築が響き合う吹き抜けの高層リビング
「異素材の組み合わせで織りなすアート空間」
シャンデリアが吹き抜け空間のアクセントにイタリア「イモラ」社の大判タイルが壁面を引き締める吹き抜け空間。階段越しに見える書斎のガラス壁とともに、「トム・ディクソン」の照明「メルト」が立体感を際立たせる。 ここは湾岸エリアに建つタワーマンション高層階のメゾネット住戸。フルスケルトンリフォームによって生まれ変わった、オーナーSさんの美意識が行き届いた住まいです。
改修の出発点は「アートと建築が呼応し合う住まいにしたい」というSさんの明確な構想でした。壁の素材や飾る作品を緻密に落とし込んだプランを携え、「アートと壁面の素材や空間の中での配置バランスなどをプロの視点から客観的に整えてほしい」と託したのが、建築家・各務謙司さんです。各務さんはリノベーションブランド「ザ・ライブラリー」の協同パートナー、田口 彰さんとともに360度の仮想空間を体感できるVRを用いて設計を進め、石やタイルの質感の組み合わせや吹き抜けに吊るす照明の高さなどの検証を重ねて、バランスの精度を高めていきました。
黒い石柱の前で家族や来客を出迎えるのは、彫刻家の佐野 藍さんが手がけた山猫をモチーフとする大理石彫刻。作品の持つリアリティと静謐さが、のびやかな空間のスパイスとなっている。
室内には、稲妻のような筋が個性的な大理石の柱や黒いガラス壁など、視線を段階的に導くための“中景”をつくるとともに、要所にアートを配置し、一気に遠景へと視線が抜けがちな高層階特有の単調さを回避。マンションならではの給排水の制約も綿密な調査と床高の調整によって克服し、上階の水回りを住まいの中心へ移すことにも成功しました。室内の基調色はグレー。そこにわずかにピンクをきかせたS邸は、アートと建築が響き合う場となっています。施主の意向と設計者の精密な提案がかみ合うことで、緊張感と温度を併せ持つ心地よい住まいが誕生しました。
上階の吹き抜けに面した場所に据えられたのは、Sさんの書斎。床面には経年変化を楽しめる「ソリド」という外壁材が採用されている。
(次回に続く。
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