〔特集〕時代が求めるラグジュアリーな暮らし 豪邸マンション新潮流 集合住宅でいかに豊かに暮らすか。壁や間取りにとらわれず、住み手の理想に合わせて再構築するスケルトンリフォームが広がっています。時代を代表する建築家による3事例から、今、求められるラグジュアリーの形をご紹介します。
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横堀建築設計事務所 コマタトモコさんが解説する
「豪邸マンション」設計手法
余白、間、素材、構成。これらのキーワードを手がかりに、制約がある中で磨かれた設計が、現代の豪邸マンションにもたらす品格を紐解きます。
一般的なPP分離(パブリックとプライベートの明確な区分)を前提としつつ、可能な範囲で両者を緩やかに重ねる“PP融合”を試みたA邸。耐力壁や開口位置の制約を踏まえながら、動線の中で公私が自然に交差する構成に。華美に頼らず、質で魅せるホテルライクなラグジュアリーを形にしています。(図面作成/ワークプレス)
(1)回遊動線

行き止まりのないプラン廊下を極力なくし、エントランスホールとリビング、ダイニング、キッチンをシークエンスに繫いだA邸。そのうえで行き止まりをつくらない回遊動線を採用したことで、住まいに奥行きと自然界の空気感が生まれています。「家の中を一巡りできるのは非常に快適。回遊動線は住まいづくりで常に意識していることです」(コマタさん)。
(2)曲線

自然の中にあるデザイン壁の角を丸く整えることで、空間の印象は驚くほど変わります。曲線はその先にある景色へと視線を導くとともに、柔らかな陰影を刻むのです。この曲線デザインは構造体の硬質さを包み込み、空間に感覚的な奥行きを与える工夫の一つ。「自然界に直線が少ないことにヒントを得て、人に寄り添う造形を考えました」(コマタさん)。
(3)自然(ニュートラル)素材
石、漆喰、和紙壁や天井は土や漆喰を用いた左官仕上げ、床は木や石、扉は和紙といった自然素材を基調に構成。既存軀体の凹凸の壁(写真)は、その奥行きの差を生かしながら石壁や収納として取り込みました。過度に主張しない自然の表情が、アートや日常の品々を等しく引き立てる――。それがこの住まいにおけるニュートラルな在り方です。
(4)アート
余白と間を生かすスケルトンリフォームでも取り外せない耐力壁を生かし、エントランスホールへと続く壁面をアートギャラリーに。その中心を飾るのは、世界的彫刻家・豊福知徳さんの作品。周囲に意識的に余白と間を設けることで、通路をアートと向き合う場へと昇華しています。「選び抜かれたアートピースが住まいに命を吹き込みます」(コマタさん)。
(5)ヌック
可変的な空間ヌックは、回遊動線の途中に設けた、リビングでもダイニングでもない小さな居場所。読書や語らいの場としてはもちろん、来客時にはセカンドリビングとなる可変性が魅力です。A邸のヌックは、壁に包まれるような心安まるしつらい。閉じすぎず、開きすぎない空間が、暮らしに奥行きと選択肢を与えてくれます。
横堀建築設計事務所
コマタトモコ東京都生まれ。聖心女子学院卒業後、ICS カレッジオブアーツ、桑沢デザイン研究所、早稲田大学芸術学校建築学科卒業。1995年、夫の横堀健一氏(左)と「横堀建築設計事務所」を設立。住宅設計を軸に空間とアートの関係を探究している。(写真/齋藤幹朗)
(次回に続く。
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