〔特集〕時代が求めるラグジュアリーな暮らし 豪邸マンション新潮流 集合住宅でいかに豊かに暮らすか。壁や間取りにとらわれず、住み手の理想に合わせて再構築するスケルトンリフォームが広がっています。時代を代表する建築家による3事例から、今、求められるラグジュアリーの形をご紹介します。
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「余白」と「間」を生かす
ホテルライクなラグジュアリー空間(インテリア)
──A邸[東京]
空間を緩やかに仕切ることで奥行きを出す
エントランスホールから、アール壁に導かれるようにリビングへ。そこからはダイニングが壁越しに見え、空間の繫がりに奥行きが感じられるA邸。リビングに配した柔らかなフォルムのソファは「ステラワークス」。手前に敷いたラグはオーダーメイドラグで知られる「ソルスティス」。そしてテーブルとスツールは、月の満ち欠けを表現したオリジナル。アートを楽しみたくなる余白が随所に用意されているのが、この家の魅力です。
柔らかな曲線と自然素材を生かした現代のラグジュアリー
リビングから続くダイニング。続き間を緩やかに分けるのは、造作のシェルフと折り上げ天井。ダイニングテーブル奥の壁に飾っているのは、ハイエンドなフランスのインテリアブランド「エリティス」の壁紙。抽象的な意匠が、空間と見事に調和する。
ヴィンテージマンションをスケルトンに戻し、現代の感性で再構築する――A邸は、今の時代が求めるラグジュアリーの本質を映す住まいです。A邸の周辺には美術館やギャラリーが点在し、アートが暮らしの延長にある土地柄。「横堀建築設計事務所」のコマタトモコさんは、そこからアートとアブストラクト(抽象)を掛け合わせた「AR-BSTRAC-T(ア ・ブストラクト)」というコンセプトを導き出しました。装飾を削ぎ落とし、形や素材、光と影といった本質へと目を向ける発想です。
「アートは、住み手の思考や心情、魂までも映し出す存在だと思っています」とコマタさん。そうした存在を生かすには、空間は主張しすぎないほうがよいとの考えから、壁と天井は左官仕上げの土壁とし、サンドベージュ一色で統一。それが光や影を繊細に映し、日本的な余白と間の感覚に繫がります。ちなみに、余白とは何もないところではなく、光や影を感じ、空間の広がりを味わうためのゆとり。そのゆとりがあるからこそアートは存在感を放つのです。
我が家がスイートルームになる
主寝室の壁と天井もほかの部屋同様、左官仕上げの土壁を採用。濃色ガラスを用いたウォークインクローゼットは、引き戸を閉めても内部がほのかに透けて見え、ショーケースのような佇まい。
A邸ではエントランスホールから続く壁面をギャラリーとし、絵画や彫刻、あるいは道端の石や木の枝といった一期一会のアートを迎え入れています。「心惹かれるものはすべてアート。それらは一定の距離と間合いがあってこそ、空間になじむのだと思います」とコマタさん。そうした余白のとらえ方は、空間構成にも貫かれています。4LDKだった間取りは、回遊動線を軸に緩やかに連なるプランへと再編。抑制された設計がしなやかなリズムを生み、都会の住まいに美術館にも通じる静謐さをもたらしています。
洗面所は石と土の素材感を生かしたしつらい。静かな余白が、日常の所作さえも美しく引き立てる。
主寝室とは別に設置されたウォークインクローゼット。中央にアイランドカウンターを配し、効率のよい回遊動線に。
(次回に続く。
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