住まい

建築家・坂倉竹之助さんの軽井沢別荘「原点は祖父、西村伊作と過ごした簡素な家」

憧れの軽井沢ライフ 第2回(全25回) 本物の軽井沢別荘文化を知り、この地をこよなく愛する人々の別荘ライフと軽井沢の本物の暮らしを追求する話題のホテル、美食の新潮流を紹介していきます。前回の記事はこちら>>

坂倉竹之助さんの軽井沢別荘(1)
軽井沢の原点は祖父、西村伊作と過ごした簡素な家

西村別荘

西村伊作

“家族がいつでも
世代を超えて交流できる──
それがいちばん大事なこと”

坂倉竹之助さん(建築家)

大正デモクラシー期を代表する文化人の一人で、建築家で陶芸家・画家、教育者でもあった西村伊作。彼は1920年代に軽井沢に住み始め、以後、9人の子どもたちのために母屋のまわりに家族のコテージを建てていきました。

その別荘地があるのは、皇室ゆかりのテニスコートの近く、旧軽井沢銀座から並木道を進んだところです。広大な敷地には木に囲まれるように7棟のコテージが点在、それぞれに落ち着いた雰囲気を漂わせています。

西村伊作

西村伊作
1884年和歌山県生まれ。青年期から独学で絵画や陶芸に熱中。後に生活改善に取り組み、自邸の設計なども行う。1921年、東京・駿河台に「文化学院」を創立するとともに、「西村建築事務所」を開き、建築活動を行う。

その中で最も古いのが、伊作が過ごしたという平屋造りの建物。伊作自身が手がけたものはすでに取り壊され、現存するのは長男・久二さんが設計した建物ですが、庭に面したテラスや大きな窓、リビングを中心とした間取りに、家族の交流、自然との調和を大切にした伊作の精神が継承されています。

「ここは僕にとって特別な場所です。なぜなら、生まれてから20数年間、毎年夏には叔父、叔母、いとこら20人ほどと一緒に、共同生活のように1か月余りを過ごしましたから」と話すのは、伊作の孫で建築家の坂倉竹之助さん。

坂倉竹之助

坂倉竹之助
1946年東京都生まれ。坂倉建築研究所会長。西村伊作の孫。父は日本のモダニズム建築の第一人者、坂倉準三。主な作品に「東京ミッドタウン」、「河口湖美術館」、「中軽井沢カントリークラブ」、「ギャラリー・サカ」など。

坂倉さんにとって軽井沢での夏の日々は幼少期の記憶のすべてといえるほど、深く心に刻まれているといいます。

名門避暑地に暮らすということ 憧れの軽井沢ライフ

1950年代の軽井沢での避暑の様子。当時の楽しみは自転車に乗ることだったという。

「昼は籐の椅子や木のテーブルを庭に運び出して、みんなでティーパーティをしたり、夜は母屋で全員が同じテーブルについて食事をした後、庭で焚き火をしながらくつろいだり。そんな中、祖父はいろんな話をしてくれました。とりわけ祖父と親しかった僕は、一緒に薪割りや樹木の世話などをしながら、人生や自然について学んでいったように思います」。

名門避暑地に暮らすということ 憧れの軽井沢ライフ

軽井沢での西村伊作一家の写真。右から3人目が坂倉さん。その隣が祖父の伊作。

建築家として、間違いなく伊作の影響を強く受けているという坂倉さん。その影響の一つが、“自然に従う”という精神でした。

「軽井沢は、外国人宣教師が移り住んだのを機に、避暑地として知られるようになりました。そのため、建物の造りとしては簡素で、戸外での生活が楽しめるように設計されているのが特徴です。

祖父の建てたコテージも同様で、トタン屋根の質素なものでしたが、大きな窓のあるリビングをはじめ、自然が満喫できるテラスや広い庭があり、大人も子どもも一緒になって交流できる豊かな時間がありました。その豊かさは、どんなに年数が経っても色褪せません。だからこそ今でも毎夏、国内外にいるいとこたちはこの場所に集まることを何よりも楽しみにしているんです」。

生前、「真の自由は、最もよく自然に服従することである」という言葉を遺した伊作。自然に従うその精神は、軽井沢の本流として坂倉さんへと継承されているのです。

名門避暑地に暮らすということ 憧れの軽井沢ライフ

西村伊作が1955年に描いた軽井沢の別荘。自身が設計したものはすでにないが、半世紀以上経つ今も木立の中にコテージが点在するこの場所の雰囲気は変わらない。天気のよい昼下がりは、屋根付きのテラスでサンドイッチやクラッカーでティーパーティを楽しんだ。

簡素で質素な佇まいが軽井沢の正流

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撮影/本誌・西山 航 取材・文/冨部志保子

『家庭画報』2021年8月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。

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