〔特集〕今、世界が注目する気鋭作家50 新「うつわ」名鑑 世界で唯一無二の「うつわ」大国、日本。伝統を受け継ぎながらも、工芸とアートの境界を軽やかに行き交う気鋭の作家たちが、今、新たな価値観を創出しています。伝統と革新が交差する現場で、次世代の器づくりに挑む作家たちの創作への思いと、その先に見据える未来に迫ります。
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器をモチーフに、アートの領域へ
安永正臣(三重・伊賀)
工芸とアートの境界を超え、器をモチーフとしたアート作品を制作する安永正臣さん。
製材所だった場所を自らリノベーションした広大なアトリエにて。身長188センチの安永さんの肩まで迫る巨大な作品群は、アジアの現代アートシーンの中核を担う『アート・バーゼル香港』に出展された。
陶芸を志すきっかけとなったのは、友人に誘われた大阪産業大学のオープンキャンパスで星野 曉さんの作品に触れたこと。星野さんは1948年に京都で結成された前衛陶芸家集団「走泥社(そうでいしゃ)」メンバーとして活動した人でした。
「夕方家に帰って、すぐ母に “陶芸をやっていくつもり” と伝えました」
安永さんの作品の特徴は、素地に陶土ではなく釉薬を使うこと。液状の釉薬の粘性を高める工夫をし、手びねりで成形。その後、砂に埋めて焼成するという、独自の技法です。その作品は、窯の中で何万年もの時間が経ったかのような、発掘品かと思うほど古さびた景色を湛えています。
焼成を終えた作品。ずらりと並べられた様子は、まるで遺跡から発掘された古代の祭祀品のように見える。
「活動を始めた頃は、食器とアート作品の両方を制作していました。その過程で、器とは何なのかを考え続け、大切なものを守るための象徴、つまり世の中のすべてのものが器なのではないかという考えに至りました」
細かな渦巻きは、素地に搔き落とし模様を入れ、全体を化粧土で覆って焼成したもの。表面の化粧土を取り除いて磨くと、象嵌のような模様が現れる。「Melting Vessel」シリーズ(口径12×高さ25センチ)。
素地と周りを覆った砂や砂利が焼成中に融着して独自の景色が生み出される。「Melting Vessel」シリーズ(口径18×高さ38センチ)。
各国のギャラリーでの個展やアートフェアなどで、世界中の人々に求められる安永さんの作品。2026年は、南米エクアドルの私立美術館に招聘され、展覧会の開催を予定しています。
子どもが生まれたことをきっかけに、2015年から作り続けている「Empty Creature」シリーズ( 幅40×奥行き14×高さ23センチ)。
安永正臣(やすなが・まさおみ)インスタグラム:
@masaomi_yasunaga1982年大阪府生まれ。大阪産業大学大学院環境デザイン専攻修了。星野曉氏に師事。2007年伊賀に工房を設け独立。京都とロサンゼルスを拠点とするノナカ・ヒル・ギャラリーに所属し、イギリスのリッソン・ギャラリーなどでも作品を発表。
パラミタミュージアム(三重県・三重郡)『第20回パラミタ陶芸大賞展』に作品を出展。会期は2026年6月4日~7月26日。
(次回に続く。
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