〔特集〕今、世界が注目する気鋭作家50 新「うつわ」名鑑 世界で唯一無二の「うつわ」大国、日本。伝統を受け継ぎながらも、工芸とアートの境界を軽やかに行き交う気鋭の作家たちが、今、新たな価値観を創出しています。伝統と革新が交差する現場で、次世代の器づくりに挑む作家たちの創作への思いと、その先に見据える未来に迫ります。
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菊池ビエンナーレ、注目の作家
菊池寛実記念 智美術館が主催する公募展「菊池ビエンナーレ」は、陶芸の既成概念を超える数多くの作家を発掘してきました。最新回の大賞受賞作家をはじめ、受賞経験をもつ、圧倒的な個性で新風を吹き込む気鋭の作家たちをご紹介します。
火がもたらす奇跡と進取の精神を一碗に込めて
加藤亮太郎(岐阜・多治見)
火入れの準備が整うと、窯場に柏手の音が響きました。窯に向かって手を合わせる加藤亮太郎さん。その姿からは真摯な祈りの心が伝わってきます。
「窯に詰めるまでは自分の仕事ですが、ここから先は火の神様におあずけする。赤松の薪を放り続けて到達させる1300度の世界ではさまざまなドラマが起こります。そこをくぐり抜けたものだけが纏う強さと美しさがある」。
土と炎の神秘2日間焚き続けた窯から茶碗を引き出す。釉薬が溶けた瞬間に窯から出して固めることで、引出黒と呼ばれる漆黒の色つやが生まれる。
祈りを積み重ねて焼いていくことは、人間の技術と自然の炎の力との共同作業。予想を超えるものが出てくるのが堪らないといいます。
1804年に開窯し、江戸城の御用窯として食器を納めていた幸兵衛窯。祖父・卓男氏が築いた桃山時代様式の半地上式穴窯では、主に志野焼を焼成。
美濃桃山陶に向き合う加藤さんは、桃山の名器から多くを学びました。雰囲気や匂いのようなもの、そして桃山時代を象徴する “進取の精神” も。
「自分の内にあるさまざまな要素を融合させることで、新しい表現をしたい」。
その精神は制作の主軸である茶碗はもとより、書と陶が一体となった作品や、異素材とのコラボレーション作品にも表れています。
右から、深い緑にターコイズブルーが浮かぶ「織部茶盌」(径11.7×高さ8.7センチ)22万円 窯入れしながら鉄絵を施した「志野茶盌」(径13.7×高さ10センチ)27万5000円 森羅万象を彷彿させる窯変(ようへん)に引き込まれる「瑠璃黒茶盌」(径11.1×高さ10.8センチ)22万円。奥は陶板書「煉」(縦41.3×横31センチ)22万円。
2025年パリで行われた個展も盛況で、現地で開いた茶会も強い関心を集めました。
「元来、茶碗は主客が心を通わせるためのツール。世界の人と人との心を繫ぐ架け橋になっていくかもしれません」。
加藤亮太郎(かとう・りょうたろう)インスタグラム:
@ryotarokato1974年七代加藤幸兵衛の長男として生まれる。祖父は人間国宝の加藤卓男。2000年京都市立芸術大学大学院陶磁器専攻修了後、家業の幸兵衛窯に入り、2015年に八代目を継承する。2024年に日本陶磁協会賞受賞。穴窯焼成による美濃の茶陶を中心に制作。
[幸兵衛窯]岐阜県多治見市市之倉町4‒124 TEL:0572(22)3821
2026年6月19日~28日に画廊光芳堂(岐阜市)で個展開催予定。また、八勝館と「家庭画報」によるおせち特別企画で、器を制作中。
(次回に続く。
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