〔特集〕今、世界が注目する気鋭作家50 新「うつわ」名鑑 世界で唯一無二の「うつわ」大国、日本。伝統を受け継ぎながらも、工芸とアートの境界を軽やかに行き交う気鋭の作家たちが、今、新たな価値観を創出しています。伝統と革新が交差する現場で、次世代の器づくりに挑む作家たちの創作への思いと、その先に見据える未来に迫ります。
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菊池ビエンナーレ、注目の作家
菊池寛実記念 智美術館が主催する公募展「菊池ビエンナーレ」は、陶芸の既成概念を超える数多くの作家を発掘してきました。最新回の大賞受賞作家をはじめ、受賞経験をもつ、圧倒的な個性で新風を吹き込む気鋭の作家たちをご紹介します。
おいしそうで、触れたくなる、多彩なピンク
星野友幸(東京・国分寺)
色味が微妙に異なるさまざまなピンク、そのどれもが楽しげに語りかけてくるよう……。星野友幸さんはピンクをテーマとする作家。しかも陶器と磁器それぞれの特性を生かした表現を追求するという稀有な存在です。
「果実」シリーズ(径10×高さ9センチ)各4万4000円より。ぽってりとした釉薬を施したりんごは星野さんのアイコニックな作品の一つ。
「ピンクは好きな色として始めたのですが、作るうちに自分の人間性を表す色だということに気づきました」。
しかし、そこに行き着くまでは苦悩の連続でした。社会人を経て京都の陶工専門学校に入り、年若の同級生の大半が陶芸と繫がりのある出自、という己との違いを目の当たりにしました。
師匠のもとでの修業を続けるも独自のモチーフが見出せず、独立しても試行錯誤の日々。自らの心に問いかけるうちにやがて、好きな色で表現してみようという思いに辿り着きました。
右、「花生 苺乳(ばいにゅう)」(口径4×高さ33×底径8センチ)22万2000円 左、「花器 苺乳」(縦24×横27×高さ24センチ)33万円

「輪花皿 練上」(径23.5×高さ2センチ)3万8500円
星野さんのピンクは、顔料をブレンドして土や釉薬に混ぜることで生まれます。磁器と陶器では配合も変え、同じ素材でも色調に強弱をつけます。
淡いピンクのマーブル模様を浮かび上がらせた練上の片口。これから釉薬を施す。

釉薬を厚めにかけるのが星野さんの陶器作品の特徴の一つ。「ピンクはトーンを間違えると品を失うので、色味を強めにしつつ品を保つギリギリを探します」。
練上というマーブル模様を出す技法を発展させ、ピンクとグレージュといったように色相の異なるパーツを継いで一つの作品にする星野さん独自の“練継(ねりつぎ)”という技法も編み出しました。
ピンクの顔料を練り込んだパーツとグレージュの顔料を練り込んだパーツを接続するという、星野さん独自の技法の作品「練継器 ピンクグレージュ」(径30×高さ32.5センチ)66万円 写真/Keisuke Osumi (coil)
今後さらにどんなピンクを見せてくれるのか、その世界観の展開に目が離せません。
星野友幸(ほしの・ともゆき)インスタグラム:
@tomoyukihoshino1976年山梨県生まれ。横浜市立大学卒業後、人材サービス企業にて5年間勤務。2005年に京都府立陶工高等技術専門校卒業後、陶芸家・猪飼祐一氏に師事。2007年に国分寺にて独立。2013年、日本工芸会正会員に認定。「第5回菊池ビエンナーレ」奨励賞受賞。
2026年5月8日~13日は柿傳ギャラリー「小さきものはみな美し展」(東京・新宿)、7月22日~27日は福岡三越(福岡・天神)にて個展を開催予定。
(次回に続く。
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