〔特集〕今、世界が注目する気鋭作家50 新「うつわ」名鑑 世界で唯一無二の「うつわ」大国、日本。伝統を受け継ぎながらも、工芸とアートの境界を軽やかに行き交う気鋭の作家たちが、今、新たな価値観を創出しています。伝統と革新が交差する現場で、次世代の器づくりに挑む作家たちの創作への思いと、その先に見据える未来に迫ります。
・
特集「新『うつわ』名鑑」の記事一覧はこちら>>>
菊池ビエンナーレ、注目の作家
菊池寛実記念 智美術館が主催する公募展「菊池ビエンナーレ」は、陶芸の既成概念を超える数多くの作家を発掘してきました。最新回の大賞受賞作家をはじめ、受賞経験をもつ、圧倒的な個性で新風を吹き込む気鋭の作家たちをご紹介します。
“器” と “オブジェ” の境界を探る若き鬼才
中根 楽(滋賀・東近江)
「今、この時代に自身の作品が選ばれたことの意味を考えたり、『そもそも自分はなぜ物作りをするのか』を振り返っています」。こう語るのは、「第11回菊池ビエンナーレ」の大賞受賞者、中根 楽さん。滋賀県の工房を訪ねました。
人の手と、自然や偶然の重なりが生む美しさ注目の若手作家、中根 楽さんのアトリエで。森に佇むオブジェの割れたような形は、焼成時の爆発によるもの。偶然の産物はかえって、作品の退廃的な魅力を引き立てている。
創作の源となるのは自然物や旅で見た景色、そして時の経過です。代名詞ともいえる美しい “罅(ひび)化粧” は、乾いた田んぼに着想を得たもの。また、中央がくぼんだ器のようにも見えるオブジェ(下写真)には、日本人特有の器に対する感覚が生かされているといいます。
特徴的な罅(ひび)模様をまとい、不均衡な自然美を宿した作品。制作では「置かれる空間を想像しながら自分にとって心地いい形を探っていく」という。オブジェ(径35×高さ30センチ)非売品 プレート中(径23×高さ7センチ)1万3200円 同小(径17×高さ6センチ)8800円
成形した素地に化粧土をつけて焼き、収縮率の違いを利用して細かな罅を作り出す。黒い釉を塗布し、表面をふき取って模様を際立たせる。
「海外を旅すると、日本人ほど器にこだわりのある民族はいないと感じますね。弟子時代、先生がオブジェにパエリアを盛ってお客さんに振る舞っていたのが印象的だったのですが、そうした見立ての感覚は日本独特で面白い。どこかに用途性を感じられたり、想像する “余白” があることに惹かれます」。
暮らしの器も手がける中根さん。現在は旅の記憶を描いた染付を制作中。
インドで目にした水牛を描いた試作中の染付。絵付けの上に植物の灰を重ねて焼成した。絵柄と灰のバランスをこれから見極めるそう。下は罅化粧に青の釉(うわぐすり)を施したプレート。ともに非売品。
「罅化粧だけでなく、陶芸にはたくさんの可能性があります。生涯探していきたいです」。
中根 楽(なかね・がく)インスタグラム:
@gaku_nakane1995年滋賀県生まれ。高校から京都で陶芸を学び、丹波篠山の陶芸家・市野雅彦氏に5年間師事し、2021年に独立。「ロエベ財団 クラフトプライズ2024」ファイナリスト。2025年「第11回菊池ビエンナーレ」で過去最多452点の中から大賞を受賞。
2026年5月22日~6月2日は岩倉AA(京都・岩倉花園町)、9月25日~10月3日はATELIERMO(東京・南青山)にて個展を開催予定。
(次回に続く。
この特集の記事一覧はこちらから>>)