〔特集〕今、世界が注目する気鋭作家50 新「うつわ」名鑑 世界で唯一無二の「うつわ」大国、日本。伝統を受け継ぎながらも、工芸とアートの境界を軽やかに行き交う気鋭の作家たちが、今、新たな価値観を創出しています。伝統と革新が交差する現場で、次世代の器づくりに挑む作家たちの創作への思いと、その先に見据える未来に迫ります。
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木と対話し生まれる美しき仏教彫刻
中村志野(石川・山中温泉)
高校の修学旅行で訪れた法隆寺の金堂で出合った釈迦三尊像に衝撃を受け、仏教彫刻の道を志した中村志野さん。東京藝術大学にて仏像保存修復を研究しながら自身の仏像作りに取り組み、並行して器など身近な小品も手がけています。確かな学術知識に基づく仏教美術をモチーフにした作品は、唯一無二の存在感を放ちます。
身近に小さな祈りの対象をと制作した「小十一面観音立像」(3.5×2.7×高さ12センチ、ヒノキ)13万2000円 写真提供/うつわノート
栓(せん)の木材で作った「四方縁花丸盆」(直径33×高さ1.6センチ)4万6200円 写真提供/うつわノート
制作は「木」と対峙することから始まります。木材を手に取り、そこからひらめいたものを構成、図面に起こし、彫刻刀を使って形にしていきます。木地挽物の名産地である石川県山中へ移住したのも「木という材への飽くなき興味」からきているといいます。
カツラの木の箸置き。左上から時計回りに・枇杷(びわ)、みみずく、宝相華(ほうそうげ)、めだか、朝顔、つくし、たんぽぽ、きのこ、栗、虎(各0.5~6.7×1~4.3×高さ0.6センチ)各4400円(枇杷のみ4950円)
「仏教彫刻が部屋の片隅に置かれている。それだけで心の拠り所になり、日常を潤してくれるでしょう。美術館やお寺では、彫刻作品や仏像を触ることはできません。ですが、木は触れてはじめてそのよさと安心感を得ることができます。ぜひ手で直接触れ、使いながら彫刻の美しさを感じてほしいです」と中村さん。
自身がろくろで挽いた茶椀で一服。
今後も木と向き合いながら立体表現に挑み続けていきます。
中村志野(なかむら・しの)インスタグラム:
@shino_n_a1984年青森県生まれ。金沢美術工芸大学彫刻専攻卒業後、2013年東京藝術大学大学院にて仏像保存修復を学び博士号を取得。助手・技術職員を経て、石川県山中温泉にて挽物ろくろの技術を修める。現在は子育てをしながら彫刻や器を制作する。
2026年5月6日~17日に東京の「玉川堂 笄 KOGAI」企画展にお盆を出品。9月4日~13日に「RITMUS」(佐賀・大和町)にてグループ展、11月21日~28日にうつわノート(埼玉・川越)にて個展を開催。
(次回に続く。
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