〔特集〕今、世界が注目する気鋭作家50 新「うつわ」名鑑 世界で唯一無二の「うつわ」大国、日本。伝統を受け継ぎながらも、工芸とアートの境界を軽やかに行き交う気鋭の作家たちが、今、新たな価値観を創出しています。伝統と革新が交差する現場で、次世代の器づくりに挑む作家たちの創作への思いと、その先に見据える未来に迫ります。
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“練り込み” で描かれる動物たちに心ときめく
高橋由紀子(三重・伊賀)
驚くほど緻密で鮮やかな、花や生き物の器。思わず笑みがこぼれる意匠は筆によるものではなく、色付けした土を組み合わせて柄を生み出す “練り込み” という技法で表現されています。
高橋さんの感性と技が存分に発揮された大皿。「ヨウムと向日葵 大皿」(径39×高さ7センチ)49万5000円
作り手は、この技法を独学で習得し、独創的な器を生み出す高橋由紀子さん。練り込みといえば縞模様や市松模様を想像しますが、高橋さんが得意とするのは絵画のように写実的な表現です。
信楽で開発された光を通す土「透土」を使った器。発色がよく柄が際立つ。手前は鯨の尾びれが蓋になった酒器。奥から、「椿と金魚 花器」(径20×高さ26センチ)55万円 「鯨 酒器セット」(鯨・幅23×奥行き11×高さ14センチ、盃・口径5.5×高さ3センチ)11万円
高橋さんは美術短大を卒業後、28歳で陶芸の道に進みました。研修先の信楽で多くのベテラン作家と出会い、「自分にしかできないことを見つけよう」と決意。
そこで閃いたのが、得意にしていたアイスボックスクッキーの作り方をヒントに、棒状に組み立てた土をカットして絵柄を作るアイディアです。しかし当時は知識の乏しさから、作陶は失敗の連続。
顔料で土に色をつけたパーツをいくつも作り、断面をイメージしながら重ねる。ピアノ線を使ってカットすると、ハシビロコウが姿を現した。
「異なる土を組み合わせて焼成したら亀裂が入ってしまい、それが収縮率の違いによるものだということも最初はわからなくて。先輩方に助言をもらいながら試行錯誤しました」。
不断の努力を重ね、鱗模様や花のほころびまでを生き生きと写し出す、独自のスタイルを確立したのです。
動物のフォルムを器にした意欲作。「フラミンゴ カップ&ソーサー」(カップ・幅〈取っ手含む〉11×高さ7センチ、ソーサー・径11.5×高さ2センチ)1万3200円
「今後は練り込みの柄を生かす器の形をもっと追求したい」と、飽くなき探求心を笑顔で語ってくれました。
高橋由紀子(たかはし・ゆきこ)インスタグラム:
@yukiko_takahashi1981年滋賀県生まれ。嵯峨美術短期大学でテキスタイルや金工、陶芸を学ぶ。卒業後はお笑いの道へ。28歳で陶芸家を志し、信楽での修業を経て独立。独学で習得した練り込み技法による精緻な作風は、イギリスや台湾など、海外からも注目を集めている。
2026年4月25日〜5月10日は旅館寿亭水雲閣(三重・菰野町)にてグループ展、5月2日〜5日は「信楽作家市」(滋賀・甲賀)に参加予定。
(次回に続く。
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