〔特集〕今、世界が注目する気鋭作家50 新「うつわ」名鑑 世界で唯一無二の「うつわ」大国、日本。伝統を受け継ぎながらも、工芸とアートの境界を軽やかに行き交う気鋭の作家たちが、今、新たな価値観を創出しています。伝統と革新が交差する現場で、次世代の器づくりに挑む作家たちの創作への思いと、その先に見据える未来に迫ります。
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UTSUWAは世界の共通言語に ──
SNSの普及により、美しいものの魅力が瞬時に伝わる時代。素材の温もりと作家の想いが込められた日本の器は、国境を越えて人々の心を捉えています。炎と土が生み出す神秘性、和食や茶道などの文化を通じて知る一客に込められた精神性への憧れ、そして異なるものを美しく取り合わせる日本独自の美学… …。日本の「UTSUWA」文化が、いま世界に新たな価値をもたらしています。
本特集では、これからを牽引する注目の気鋭作家たちを、専門家への取材を経て厳選しました。すでに評価を得ながらも、今後にも強く期待される作家。置き換えのきかない個性があり、新しい作風を確立している作家。そんな視点のもとで集結した50人。令和の「新『うつわ』名鑑」から、豊かな時間をともに重ねる、あなたにとって特別の、美しきアイテムと出合えますように。
今、家庭画報が注目する世界に羽ばたく気鋭作家
竹内瑠璃さんによる、目白と桜の香炉「桜狩り」(幅9.5×奥行き4.5×高さ12センチ)。精緻な絵付けと枝に止まった目白の鈕(ちゅう=つまみ)の造形が愛らしい、華やかな逸品。
竹内瑠璃さんの細やかな筆致によって表現された春の可憐な草花。手のひらにのせて間近に愛でたい。色絵陶箱「春野に遊ぶ」(幅9×奥行き9×高さ7.5センチ)。
命の息吹を繊細な筆致で描く美
竹内瑠璃(奈良・大和郡山)
細密にして、可憐。「もっと近くで見たい」と思わずにはいられない絵付けの器たち。京都で陶芸を学び、石川県で修業し、現在は石川県と故郷の奈良県を行き来しながら制作する竹内瑠璃さんの作品です。
「子どもの頃から動物と植物が大好きで、よく絵を描いていました。それを立体に描いてみたいと思い、焼物の世界に入りました」と竹内さん。角度によって見える景色が変わる面白さがあり、蓋を開けるとまた別の絵が現れるというストーリー性も魅力です。
奥から時計回りに、オオルリの鈕がついた山桜の水指(みずさし)「桜狩り」(径15×高さ21センチ)、同片口(幅16.5×奥行き14×高さ7.3センチ)、同猪口(径5×高さ5.5センチ)、色絵茶盌「春野に遊ぶ」(径10.5×高さ9センチ)すべて価格未定。手前の酒器は九谷の磁土、奥の水指と茶盌は野々村仁清が好んで使用した土「仁清土」を使用。
器の角や角度が変化する箇所でもモチーフが伸びやかに続くように工夫された絵付けの技術。素地(きじ)は素地師と何度もデザインを相談しながら発注しますが、動物をかたどった細工物は、自身で磁土を手びねりして制作します。 「平面の絵を360度にわたって描くような感覚で形を作ります」
骨描き(輪郭線)の上から和絵の具(色ガラス)で彩色。濃いピンク色は、焼成するとタンポポの黄色に。和絵の具の盛り上がりも醍醐味。
乾燥させた和絵の具に水を加えて使用する。約120色を所持。
特に鳥の羽根や動物の毛並みは、微細な彫りを入れ、釉薬をかけて本焼きした上からさらに細い線を描き込むことで、生き生きとした造形に。
文鳥と紅白梅の陶箱「千歳」(幅17×奥行き8.5×高さ14センチ)82万5000円
猫と鼠の香合「鈴の音」(幅8×奥行き4×高さ4.5センチ)55万円
尊敬するのは、師である山本長左さん。好きな画家は、江戸時代後期の絵師、酒井抱一。繊細な写実性と詩情とが同居する、竹内さんの作風の原点です。
竹内瑠璃(たけうち・るり)インスタグラム:
@ruri_takeuchi奈良県生まれ。企業勤務を経て、2006年京都伝統工芸専門学校(現・京都伝統工芸大学校)卒業。山本長左氏に4年間師事。2013年石川県で独立。2015年石川県立九谷焼技術研修所実習科修了。現在は奈良県大和郡山市と石川県能美市で作陶。
緑ヶ丘美術館(奈良・生駒)『悠久の息吹、時の移ろい竹内瑠璃 展』2026年5月24日まで。
ギャラリー上方銀花(大阪・東大阪)個展 2026年5月14日~23日。
(次回に続く。
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