〔特集〕~伝え継ぎたい手仕事~世界が憧れる「日本の美」 日本独特の美意識や感性、国民の手の器用さに支えられた世界でもトップクラスの匠の技は、私たち日本人が考える以上に海外の人たちを魅了する力を持っています。日本の手仕事を、今一度再評価し、次世代に継承すると同時に、今の暮らしに息づく道具として世界に発信していきたいと思います。
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「日本の美」を伝える人々
【木桶】世界に羽ばたくKI‒OKE(きおけ)
──中川周士さん(中川木工芸3代目)
京都の桶指物「中川木工芸」の3代目にあたる中川周士さん。創業者の祖父、亀一さんの代には京都に約250軒あったという桶工房ですが、周士さんが独立した2003年には、わずか3軒になっていたといいます。
工房で作業する中川さん。300種を超えるカンナを駆使して表面をなめらかに削る。
縮みゆく桶業界にありながらも、現在、周士さん率いる「中川木工芸 比良工房」は7名の若手職人を抱え、海外からのインターン希望者も増えています。
割鎌を打ち込み、側板を割り出す。
この驚異的なV字回復の理由は、“伝統と革新”、そして“世界”でした。きっかけは、2010年にフランスの老舗メゾンとコラボレーションしたシャンパンクーラーです。
シャンパンクーラー右上から時計回りに、「MISUMI」8万8000円、フランスの老舗メゾンとのコラボレーションで生まれた「KONOHA」11万円、「WAVE」29万7000円、「SHIZUKU」8万5800円、「3本挿しクーラー」33万8800円。

木桶の形の概念を超えた、波のような曲線の「WAVE」。底部のみにタガを回すことにより、木肌の美しさがより際立っている。
「道具として裏方で使われてきた桶をテーブルコーディネートという表舞台に立たせるためには、従来の丸や楕円にはない、シャープな形が求められました。試作を重ねてタガを工夫し、ようやく納得のいく形が生まれました」。
デンマークのデザインスタジオ「OeO」のトーマス・リッケとのコラボレーションで制作された「KI-OKE Stool」。2015年に英国ヴィクトリア&アルバート美術館、2016年パリのルーブル装飾美術館にそれぞれコレクションされている。2017年第1回ロエベ クラフト プライズでは、人間国宝の父、清司さんが開発した「柾合わせ」の技法を用いたトレーを出品し、ファイナリストに選出された。
続くデザイナーとの協業では、約700年続く桶の伝統工法を超え、タガ1本で締める製法を確立。
イタリア人プロダクトデザイナー、アレッサンドロ・スタビレとコラボレーションしたおひつ。胴に引っ掛けた蓋にしゃもじが載せられる、アイディアのあるデザイン。
「桶にまだ進化する余地があったことに気づきました」。木桶は今、世界中から注文が集まる「KI‒OKE」へと羽ばたいています。
プロダクトデザイナー佐藤オオキ(nendo)氏との協業で生まれたピッチャー「oke carafe」とタンブラー「oke cup」。このプロジェクトにより、タガ1本で締める製法を確立した。
中川木工芸 比良工房https://nakagawa.works/(次回へ続く。
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