〔特集〕~伝え継ぎたい手仕事~世界が憧れる「日本の美」 日本独特の美意識や感性、国民の手の器用さに支えられた世界でもトップクラスの匠の技は、私たち日本人が考える以上に海外の人たちを魅了する力を持っています。日本の手仕事を、今一度再評価し、次世代に継承すると同時に、今の暮らしに息づく道具として世界に発信していきたいと思います。
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「日本の美」を伝える人々
【京表具】表装の伝統技術を現代アートの感覚で
──井上雅博さん(井上光雅堂3代目)
京都・伏見に工房を構える「京表具 井上光雅堂」の3代目井上雅博さんは、伝統的な仕事の傍ら、京表具の技法を用いて独自の作品を手がける今注目の人物です。
明治期の麻のきものを用いてラインを描いた。布と同色の和紙を下貼りし、美しさを際立たせている。
この日取り組んでいたのは『LINE』というテーマの新作群。創作の源となるのは、仕事を通じて出合った古画や古書、明治期の麻のきものなどです。
「もったいないからというより、昔の職人の高い技術で作られたもの、その素晴らしさを伝えたい」と井上さん。
祖父の代からとってある反故紙(ほごし)(書き損じた和紙)を下貼りする井上さん。糊は小麦粉を原料に工房で手製。「100年後に次の表具屋さんが直しやすいような糊選び、貼り方をします。そういう伝統工芸の決まりはアート制作でも生かされます」。
例えば、劣化が進み破棄寸前だったという草花図の、金箔の風合いや当時の表装に着目。ほかの素材と組み合わせてモダンな作品に仕上げました(下写真)。
世界的な現代アーティストの表装も手がけ、表装という仕事を海外に発信する井上さんの新作と、その素材となった江戸時代の草花図。「素材を組み合わせて、表具出身ならではのアート制作ができれば」と語る。
「経年変化した本金の色味が美しい。先人の技を潰すのではなく、私が見てよいと思うところを抽出し、ピースとして利用します」。
紙魚(しみ)(という虫)に食われた古書を素材にした二幅対の作品。「普段はこの穴を塞ぐのが僕らの役目ですが、作品では金を下貼りして目立たせています」。
近年は伝統的な和室に留まらず、ホテルの内装など、現代建築が舞台になることも多いという表具師の仕事。
井上さんの手がけた意匠に出合える祇園のホテル「ぎおん 美先(みせん)」の客室。装飾は1室ごとに異なり、この部屋では鉄で柔らかな雲を表現。
「表具にしろアート作品にしろ、いかに今の空間に調和するように仕立てるか。それが難しくもあり、常に意識していることです」と井上さんは語ります。伝統技術の技と美を進化させた“表装アート”。さらなる可能性が広がります。
京表具 井上光雅堂https://kogado.jp(次回へ続く。
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