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[特別インタビュー]五木寛之さんへの質問。“捨てない生きかた”に至ったきっかけは?

2022.05.24

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[特別インタビュー]この混迷する時代に 五木寛之への10の質問 第1回(全5回) 1月に上梓されて以来、10万部を超えるベストセラーとなった五木寛之さんの『捨てない生きかた』。未曽有の出来事に翻弄される現代の道標として話題を集めています。“捨てない”ということを主題に、個人としての生き方から、国家論・文明論まで展開する同書。五木さんがこの著書で語る“捨てない”という言葉に込めた真のメッセージを10の質問から紐解きます。

Q1 “捨てない生きかた”の境地に至ったきっかけは?


五木寛之さん(以下、五木) 昔っからですよ。戦後のモノ不足の中で育ち、青年期はぎりぎりのアルバイト生活。九州から上京して大学に入学した当初は、泊まる部屋さえなく、“捨てる”どころか“拾う”モノを探す日々でした。若い頃には、洋服や靴、鞄など、食費を切り詰め、空腹を我慢しながら、ときには借金をしてでも手に入れていました。そうやって買ったモノが身の回りに集まり、気がつけば、モノに囲まれて暮らすようになっていました。

Q 2 五木さんにとって、そうやって身の回りに集まったモノは、どのような存在ですか?


五木 僕は、それらを愛情を込めて、「ガラクタ」と呼んでいて、記憶を甦らせてくれる大切な「依代(よりしろ)」です。

依代とは、東北の巫女が、霊的な世界に入るときに憑依(ひょうい)する媒介を指しますが、ガラクタはまさに古い記憶を呼び覚ます装置となります。マルセル・プルーストの小説に登場する主人公のように、紅茶に浸したマドレーヌの香りから昔を回想するというような優雅なものではありませんが、思い出が即座に甦るガラクタは大事な存在です。


ガラクタが溜まっていくと、体を横にして通らなければならないぐらい、身の置き所がないようなゴミ屋敷になりますが、不思議なことに破綻はしないんです。原子力発電などで、臨界点という言葉がありますが、雑然とモノが溜まっていって、ぎりぎりの臨界点に達すると積極的に捨てているわけではないけれどうまくバランスを保つようになるんです(笑)。無意識に新しいモノを入れないようにしているのかもしれませんね。

「僕の身の回りにあるガラクタは、記憶を呼び起こす“依代”です」

[特別インタビュー]この混迷する時代に 五木寛之への10の質問
五木さんは出会ったモノを大切にする。手もとに輝く時計は、1967年金沢在住時代に『蒼ざめた馬を見よ』で直木賞受賞記念にいただいたオメガの65年製「コンステレーション」。今年で愛用してから56年目。2回ほどオーバーホールを行ったが、現在でも現役だ。裏蓋には、「日本文学振興会、第56回直木賞、五木寛之君」と彫られている。



『捨てない生きかた』(マガジンハウス刊)

『捨てない生きかた』(マガジンハウス刊)何年も着ていない服や、古い靴、鞄、本、小物たち。一見、何の役にも立たないように見える愛着のある「ガラクタ」こそ、後半生を豊かに生きるために大切にすべき回想の友であると提言。捨てる身軽さより、捨てない豊かさに気づかされる、コロナ以降の新時代の生きるヒントが詰まっている。
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五木寛之(いつき・ひろゆき)

1932年福岡県生まれ。作家。早稲田大学ロシア文学科中退。66年デビュー作の『さらばモスクワ愚連隊』で小説現代新人賞、67年『蒼ざめた馬を見よ』で直木賞ほか、受賞作多数。近著には第64回毎日出版文化賞特別賞を受賞した『親鸞』など、仏教に関心を寄せた著作が多い。





[特別インタビュー]この混迷する時代に 五木寛之への10の質問



01 “捨てない生きかた”に至ったきっかけは?





この特集の掲載号
『家庭画報』2022年6月号



『家庭画報』2022年6月号


撮影/伊藤彰紀〈aosora〉(人物) 取材・文/小倉理加
『家庭画報』2022年6月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。
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