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奇跡のような明るさで——林真理子さんが語る、瀬戸内寂聴という人生

2022.03.31

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[追悼企画・瀬戸内寂聴さん]林 真理子さんが語る 瀬戸内寂聴という人生 常に全力投球で、明るいお人柄。家庭画報本誌の対談でも楽しいお話が絶えることがありませんでした。いつも「自分の才能の可能性は、死ぬまで引き出せるのです」と話されていたお姿が忘れられません。長年にわたり交流されていた、作家・林 真理子さんに瀬戸内寂聴さんという大文学者について語っていただきました。
瀬戸内寂聴さん

平安神宮神苑にて。社殿を囲むように広がる神苑は回遊式庭園で、四季折々の草花の美しさを楽しむことができる。寂聴さんは、この橋殿からの景色がお気に入りだった。特に枝垂れ桜の咲く頃が美しいと話されていた。写真は、家庭画報本誌2000年10月号「瀬戸内寂聴さんが行く『源氏物語』こころの旅」より。写真/梅木則明

瀬戸内寂聴
1922年、徳島県生まれ。東京女子大学卒業。1963年『夏の終り』で女流文学賞を受賞。1973年、中尊寺で得度受戒、仏子号は寂聴となる。1992年『花に問え』で 第28回谷崎潤一郎賞、1996年『白道』で第46回芸術選奨文部大臣賞、2001年『場所』で第54回野間文芸賞を受賞。『源氏物語』の現代語訳ほか著書多数。2006年、文化勲章受章。

99年間才能を開花させ続けた文学者
奇跡のような明るさで


文・林 真理子

つい最近、京都に行く用事があった。

京都駅が近づくにつれ、

「ああ、もう寂庵に先生はいらっしゃらないのだなあ」

という感慨が押し寄せてきた。

それほどしょっちゅう伺っていたわけではない。が、京都のはずれに先生がお住まいで元気でいらっしゃるというのは、どれほど私の心の支えになっていただろうか。

タクシーに乗り、「寂庵まで」というと、たいていの運転手さんが行ってくれた。三十年前初めて訪れた頃は、畑や小さな村があり、それこそ「京のはずれ」であったが、近年急に建物が増えていった場所だ。

が、寂庵の数寄屋門のあたりは、まるで変わっていない。ブザーを押すと、秘書のまなほさんがやってきて、静かに門を開けてくれる。美しい苔のある庭の階段を上がると、先生のお住まいだ。まるで高級旅館のような和のつくり。玄関で靴を脱ぎ左に曲がる。そして短い階段を上がると、そこは応接間になる。高台になっているので、ガラス越しに庭がよく見える。

テレビで映るあの場所だ。

やがて先生が、「いらっしゃーい」と、満面の笑みをたたえて入ってくる。ある時など、わざとドタドタと音をたてて、階段を上がっていらっしゃった。

「秘書の方だと思いましたよ」

「そう思わせようと、わざとやったのよ」

茶目っ気たっぷりに笑われた。確か腰を悪くされ、退院されたばかりだったと思う。不死身のところを見せたかったのだ。

この部屋で先生からいろいろなことを聞いた。

対談の時がほとんどだが、一人で来たことも何回もある。昭和の女性作家を書く時、先生はまさに生き証人だったのだ。

時には話があちこちに脱線する。それがあまりにも面白いので、

「先生、本当ですか」

何度もお聞きしたものだ。

「本当よー。本当にすごかったんだから」

あの独特のかん高い声が、急に早口になった。

先生はサービス精神旺盛な方で、人を喜ばせるのが大好きだった。話をかなり盛るし、テレビに出るのもお嫌いではない。

先生の国民的人気は、メディアに数多く出ていたことによるのは間違いないことだろう。女性週刊誌などいくつもの雑誌に連載を持ち、説法もなさった。テレビで芸能人の方々とも楽しくお喋りをする。
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